健康食品・サプリメントにご用心

この記事は、Rikatan2014年春号に寄稿した記事の転載です。
 TVや新聞、雑誌などに様々な健康食品の広告が溢れていますが、それらの効果ってどれくらいあるのでしょうか? 手軽に購入できて、健康に役立つならば、いいのではないの? と考える人達も多いのではないかと思います。まずは、「健康食品」の定義から確認してみましょう。

◇健康食品とは?

 健康食品とは、「広く健康の保持増進に資する食品」として販売・利用されるもの(栄養補助食品健康補助食品サプリメントなど)全般を指しています。図1に食品と医薬品の分類を示したので、それを見ながら読むと分かり易いと思います。
 健康食品とは別に特別用途食品というものがありますが、これは消費者庁の審査で医学・栄養学的な配慮が必要な人の発育や健康の保持・回復に適すると認められて、特別な用途の表示が許可された食品です。
 健康食品のうち、国の「保健機能食品制度」によって健康食品の中で一定の条件を満たしている食品については保健機能食品と表示することができます。保健機能食品には、特定保健用食品と栄養機能食品があります。
 特定保健用食品は、食品の持つ「特定の保健の用途」を表示して販売される食品で、製品ごとに食品の有効性や安全性について消費者庁の審査を受けて認可される必要があります。特定保健用食品のうち、通常の特定保健用食品のレベルには届かないけれども、一定の有効性が確認されたものは条件付き特定保健用食品として認可されています。この場合は、許可マークに「条件付き」と書かれています。特定保健用食品には、例えば「一般に疾病は様々な要因に起因するものであり、○○を過剰に摂取しても××になるリスクがなくなるわけではありません」、「摂り過ぎあるいは体質・体調により△△になることがあります。多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。他の食品からの摂取量を考えて適量を摂取して下さい」等の注意事項をその食品に応じて表示する必要があります。
 栄養機能食品は、栄養成分の機能の表示をして販売される食品です。その栄養成分が規格基準で定められたものであり、1日当たりの摂取目安量の上限値と下限値の範囲内になければいけません。注意事項として、「本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。1日の摂取目安量を守ってください」等の表示をする必要があります。栄養成分以外の成分の機能の表示や「ダイエットできます」「疲れ目の方に」という風な保健の用途での表示はできません。

 「保健機能食品」の認定を受けていない健康食品は、有効成分やその効果の確認は公的にされておらず、信頼性は高くありません。健康の保持増進効果等が実証されていないのに、その効果を期待させる虚偽や誇大広告、不当表示(優良誤認表示)による宣伝は違反となります。根拠が乏しいのに、「○か月間で△キログラムやせることが実証されています」、「××を飲んでいればガンが治ります」と表示したり、嘘の体験談やねつ造された資料を表示した場合は「事実に相違する表示」として違反となります。また、広告などから受ける効果の「印象」や「期待感」と実際の効果に違いがある場合(例えば、「○○に効く△△成分を配合」と表示しておいて目的の効果が得られる有効成分の量が含まれていないのに効果があるかの様な宣伝をしたり、効果が現れない人達がいることや、一定の条件下でなければ効果が出にくいという情報を隠して誰にでも効果があるかの様に宣伝するなど)も違反になります。「□□が気になる方にもお勧め」、「△△でお悩みの方に」等、合理的根拠がないのに効果を暗示する表示も違反になります。「自然治癒力を高める」「老化防止」「免疫力アップ」「デトックス(解毒)できる」という漠然とした効果を宣伝することも景品表示法健康増進法に引っかかってきます。しかし、こうした宣伝をする商品は後を絶ちません。

◇多くの健康食品は毒にも薬にもならない−でも、ご用心

 実際に病気の治療や予防に効果があるものは、医薬品として認定され医師や薬剤師の管理の下で処方されます。「効果」のあるものは「副作用」もあるので、服用量などを適切に管理しないとメリットよりデメリットの方が大きくなってしまいます。
 いわゆる健康食品の多くは、医薬品の認定には至らない微弱な効果かしか期待できません。(イメージばかりで効果がほとんど期待できないものが大半と言ってもよいでしょう) 一般の人達が自由に購入できて気楽に利用できるものとして、健康維持の為に何かしたいという人達が「気休め」として利用するには、毒にも薬にもならないタイプの「健康食品」はうってつけなのかもしれません。しかし、適切な診療が必要なのに、その健康食品を服用していれば病院に行かなくても大丈夫だと過信させてしまい、その結果、病院に行きそびれてしまう事になると問題です。

 宣伝の中に、効果があったとする人達の声を集めた「体験談」があっても、その陰では効果が無かった人達の方が実は多いかもしれません。逆に、具合が悪くなった人達がいる可能性もあります。体験談が作り話である場合もあります。動物実験で効果があったとする宣伝も、人と動物では消化や吸収の仕組みが違ったり、感受性が違っていたりすることが多いので、人できちんと効果が確認されていないと信頼はできません。有効成分が入っていると宣伝されていても、その商品に含まれている量が効果がでる量よりずっと少ない場合もあります。
 白衣を着た「学者」さんがお勧めしていたり、有名人が愛用しているといった宣伝もよくありますが、効果があるという保証にはなりません。

 効果がほとんど無い代わりに副作用もほとんど無ければ、摂取し続けても(その物による)害は生じにくいのですが、中には効果が無いばかりか副作用が強くて健康を害するとして警告されている「健康食品」もあります。例えば、杏の種から抽出された青酸配糖体の一種であるアミグダリン(別名ビタミンB17またはレトリル)がガン治療に効果があるとして健康食品の名目でインターネットを通じて販売されており、最近はツイッターを介しても紹介されていますが、この成分はガンに対する効果はなく、体に良いどころか逆に重篤な健康障害を起こすことが知られています。(一部の人達がアミグダリンをビタミンB17と呼んでいますが、この物質はビタミンとして認定されていません) 植物由来の天然成分だから医薬品より安全であるかの様に宣伝されている健康食品も多いのですが、天然だから安全とは決して言えません。
 また、ダイエットを補助するとして売られているサプリメントには、健康を害する作用の結果として痩せるという、健康を目的とした手段としては本末転倒な商品がちょくちょくあるので要注意です。最近の例では、ダイエットを目的とした健康食品にジメチルアミルアミン(DMAA)という成分が含まれていて多数の健康被害を起こして問題となり、警告が出されています。
 こうした健康食品による健康被害の報告は後を絶ちません。健康食品は効果の実証に乏しい他に、副作用などの毒性についてもきちんと調べられていない物が多いのが実状です。毒性が発覚して規制の対象にならない限り販売が許されてしまうという法律の穴もあり、健康食品にはそうした面についても用心しておいた方が無難です。業者によっては、副作用が出た場合に「毒出し効果による好転反応(良くなる過程で起きる悪化)」だとして、そのまま服用を続ける様に説得してくる場合もありますが、そういうセールストークに惑わされずに、何らかの悪化がみられた場合はすぐに服用を中止した方がいいです。「払ったお金を無駄にしたくない」という心理もあったりしますが、続けた結果さらに悪化してしまっては、それ以上に損をしてしまいます。

 体に良いと信じて大量に摂取し続けた結果、健康被害が起きることもあります。「薬と違って食品だからいくら食べても安心」ということはありません。また、健康食品に含まれる成分が、医薬品の働きを阻害したり、副作用を引き出してしまう場合もあります。医師から薬が処方されている場合は、その医師に利用したい・利用している健康食品を伝えて悪い相乗効果が出る心配はないか相談した方が良いでしょう。

 効果が見込めないのにやたらと高価な商品もよくあります。1本(500ml)で5000円くらいする「清涼飲料水」が健康食品として売られており、これを毎日飲めば放射性物質の害などから身を守ることができると信じさせられた母親が子どもを守るためにと買い続けた結果、家計が苦しくなり離婚問題にまで発展したという笑えない話も起きています。高価であれば効果もありそうに錯覚しがちですが、医薬品並みの価格であっても(医薬品より高価な場合もあります)、「健康食品」に分類されている商品に対して医薬品以上の効果は期待しないことです。

◇最近流行の「酵素栄養学」について

 酵素を体内で消費されて欠乏する栄養素の一種だと考え、食べ物に含まれる酵素で補うことができるとして、食品中の酵素が活性を失わないように火を通さない食品(生の野菜や果物・刺身など)を中心に食べると良いとする「酵素栄養学」という健康法があります。最近、これがアンチエイジングの方法として美容と健康に良いと広められていますが、主にタンパク質からできている酵素を食べ物から補おうとしても、食べ物と一緒に胃や腸の中で分解されてしまい、酵素のまま体内に吸収されることはありません。食べ物からとり入れた酵素が、体内で作られる様々な酵素の代わりとして働くというのはニセ科学です。

 酵素は触媒の一種で、働いても消費されることはなく、何度も繰り返して反応を行うことができます。一口に「酵素」と言っても、生物が生きていく上でのあらゆる反応に関わっていて様々な働きをしており、膨大な種類があります。呼吸したり、考えたり、体を動かしたり、物を見たり感じたりするのにも酵素は関わっています。それぞれの酵素は体内でいつも必要量作られています。状況に応じてそれぞれの酵素の働きを強めたり弱めたりといった調節や、酵素を合成したり分解したりして量を調節することにより、適度にバランスが調整されています。「酵素栄養学」では、生涯で作られる酵素の量があらかじめ決まっており、ストレスなどで余分に消耗することで老化したり病気になるという説明がされていますが、これも間違いです。食べ物から酵素を取り入れないと不足して寿命が縮まるというのはウソです。

 もし、食べ物に含まれる酵素が体内にそのまま取り込まれたら、体内の制御に従わなくて暴走したり、免疫系の細胞から異物として認識されて攻撃対象となって、その結果アレルギー反応を起こしてしまう事も考えられます。原則として、食べ物から入った酵素は、消化管の壁をそのまま通り抜けて体内に入ることはありません。胃の中に入ってしばらくすると食べた酵素の多くは胃酸によって変性して働かなくなります。胃や腸での消化によって、酵素を構成するタンパク質がアミノ酸アミノ酸が数個つながったペプチドの状態にまで分解され、腸で吸収されて別のタンパク質に作り替えられたり、エネルギー源となったりします。
 ですから、体に必要な酵素を食べ物から補給しようとしても無理があるのです。栄養学として、そもそも間違っているので、生の食品を多く食べないと寿命が縮むという脅しには意味がありません。

 酵素栄養学から派生した手法として、野菜や果物を常温で放置して菌を繁殖させ、菌の中で作られる酵素を食べると体に良いとして、容器に野菜や果物を切って詰め込み、砂糖を加えて素手で掻き回してから何日間も放置して発酵させ、出てきた汁を「酵素ジュース」としてそのまま加熱せずに飲むというレシピが美容系の雑誌や料理教室でも広められていて驚きましたが、この方法は衛生上お勧めしません。手に付着している常在菌で自然に発酵させるというものですが、どんな菌が入り込むのか分からないので、安全性に問題があります。食中毒菌が混ざっているかどうかは、腐敗臭などでは判断できません。
 酵素栄養学と関連して、ガンの治療として生野菜と果物のジュースを大量に飲み、塩分も極端に減らすという栄養療法がありますが、信頼できる臨床試験の結果、ガン治療に効果が無いばかりか、食事内容が偏ってしまうことで生活の質が落ちてしまい、患者にとっては辛いばかりという結論が出されています。(*1) 根拠に乏しい健康法や、ガンが治るという療法にすぐに飛びつかずに、それに対する批判的な意見はないか調べてみることも大事です。

◇健康食品などに関して参考になる情報

国立健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報
https://hfnet.nih.go.jp/
厚生労働省:「健康食品による健康被害の未然防止と拡大防止に向けて」(平成25年9月改定)
(PDF) http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/pamph_healthfood_a.pdf
厚生労働省:健康食品の正しい利用法(平成25年3月改定)
(PDF) http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/kenkou_shokuhin00.pdf
『巷に流行る「酵素栄養学」、なんか変です』
http://d.hatena.ne.jp/warbler/20130304/1362374538

(*1)Gerson regimen.:Oncology (Williston Park). 2010 Feb;24(2):201.f