書評『サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル』

『サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル』(清水陽平著 弘文堂)

著者は、TwitterFacebookに対する発信者情報開示請求がそれぞれ最初に認められた「日本第1号事案」の実績を持つ弁護士です。
(このテーマの本を書く著者として、これ以上の適任者はいないでしょう)

この本を実際に手にとって中を見ると分かると思いますが、画像などによる図解が豊富で、どの様に手続きすれば良いのか分かり易く説明されています。

具体的な事例と対応方法が解説されており、実用性があります。
法的解説の他、削除依頼や発信者開示請求、サイト別の対応方法、各申請書の書き方まで1つ1つ丁寧に説明されてます。

最初に、様々なインターネットのトラブルを元に作成された典型的な10の事例が出されています。
それぞれの事例についての対応可能性について整理されており、これらの事例は各章での具体的な対応の仕方の解説でも使われています。

自分でできる削除依頼として、テレコムサービス協会の書式による削除依頼(送信防止措置依頼)があります。
テレコムサービス協会は、プロバイダ責任制限法関係のガイドラインの作成・公表を行っている団体です。
これについても、具体的な書き方が例示されています。
また、「Yahoo!」や「Google」に対して、「Google」のウェブマスターツールによる削除方法も書かれています。
(「Yahoo!」の検索エンジンは「Google」の検索システムが採用されているので、「Google」で削除されると「Yahoo!」にもそれが反映されます)

弁護士に頼まないとできない事も多いのですが、こうした自分でできる方法についても書かれています。

削除依頼などの申請をする際の注意点として、嫌がらせ目的で開示請求をしていると判断されてしまうと「発信者情報の開示を受けるべき正当な理由」がないとされてしまいます。
「誹謗中傷で怒りを感じても、ネット上での言動は常に気を付けましょう」とアドバイスされていますが、大事なポイントだと思います。

民事訴訟や刑事告訴については、第4章で開示手続きに続いて解説されています。

炎上への対応についても書かれていますが、P103の「炎上させないための14か条」は参考になります。

・批判に対して中傷や人格的攻撃を行わない。
・他人に対する中傷や単なる悪口の書き込みをしない。

というのは、肝に銘じたいと思います。

(付け加えると、批判をする時に相手を愚弄しないことも、名誉毀損のトラブルを回避する上で注意した方がいいと思います)

第6章は、個別サイトへの具体的な対応方法が解説されています。
30のサイトが取り上げられていますが、こんなにあったんですね…。(知らないサイトが1/3くらいありました)

最後に書かれた「おわりに」では、
最初に出された代表的な10の事例に対して、それぞれのケースの被害者の心情について著者である清水陽平弁護士が相談を受けた経験を元に書かれており、著者のコメントが添えられています。


サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル

サイト別 ネット中傷・炎上対応マニュアル