『研究不正問題―誠実な研究者が損をしないシステムに向けて』の補足

『研究不正問題―誠実な研究者が損をしないシステムに向けて』と題して、
研究不正調査における問題に関する論考を出しました。
http://synodos.jp/science/14270

現行システムの欠陥を悪用した場合に、どんな事が可能であるか最悪のケースを想定してみました。

■最悪のケースを辿るとどうなるか?

(告発)

・医薬品開発をしている研究グループが、成果を良く見せようとして不正なデータ操作をしており、その論文の不自然な点に気が付いた同じ大学の研究者が大学に内部告発する。

   ↓
(予備調査)

・予備調査で、本調査で詳細に調べられると不正判定されそうな疑義についてシロ判定をして調査を強制終了させる。(シロ判定にできなかったものについては、本調査に移行)

   ↓
(本調査)

・本調査で、わざと告発者の指摘をはぐらかして不正はないと判定したり、生データや実験ノートを確認せずに杜撰な調査をして「こういう風になるのはあり得る」「データを流用したとは認められない」等として不正ではないと判定する。
・技術レベルの低い画像解析業者に依頼して、画像に不正な加工は見いだせなかったとして不正なしと判定する。

   ↓
(調査報告)

・本調査の結果、不正はなかったとする報告書を作成して、報告義務から逃れる。
・告発者からの「不服申し立て」を握りつぶして、シロ判定をした報告書を最終報告書とする。

   ↓
(告発者への懲罰)

・実質的に上訴機関がなく「所属機関の調査は適正に行われる」という前提に立つ現行システムによって再調査の要求ができないことを利用してシロ判定を確定させ、次に内部告発者を「悪意によって告発をした」として、報復的な懲罰(懲戒解雇)を行う。

   ↓
(被害の拡大)

内部告発者を懲戒解雇することで、邪魔者の排除に成功する。不正行為は隠蔽され、不正した者が誠実な告発者を排除して安泰な地位を確保する。医薬品開発の研究で行った不正なデータ操作はそのまま訂正されずに終わり、実際以上の効果がある様に宣伝されてしまい、治療薬として認可されて他の有効な治療薬よりも優先して医療現場で使われ、患者に投与される。

※こうした最悪と考えられるシナリオが、仮想のものではなく現実に起きているかも知れません。