「悪意のない間違い」という誤訳について

STAP細胞に関する研究不正の認定で、不正行為かどうかを判断する基準として、理化学研究所の「科学研究上の不正行為の防止等に関する規程」(平成24年9月13日規程第61号)において、
「研究不正(Research misconduct)」の定義に「悪意のない間違い及び意見の相違は含まない」とされていた事で、不適切な画像操作等の行為に対して「小保方さんには、悪気は無かったのだから不正行為ではない」と解釈する混乱が起きてしまいました。

※現在でも、まだこの混乱した定義で小保方さんの行為は不正ではなかったと主張する人達がいますので、改めて正しい解釈を提示しておきます。

この「悪意のない間違い」というのは、そもそも「honest error」の誤訳であり、「誠実な間違い」という訳が意味として正しく、「誠実にやったのだが間違っていた」ものを指しています。
決して、悪意のありなしに関わらず、不適切な行為はhonest errorには該当しません

この誤訳について、愛知淑徳大学の山崎茂明教授が明解に解説されています。
山崎教授は『ORI 研究倫理入門―責任ある研究者になるために』(Nicholas H. Steneck著)の翻訳本(2005年)を出すなど、研究倫理がご専門です。

(参考資料)2014年12月5日千葉大学附属図書館:アカデミック・リンク・セミナーより
http://alc.chiba-u.jp/seminar/handout_20141205_yamazaki.pdf
P19〜「不正行為の定義をめぐる混乱」

ORI定義の原文と正しい訳

Research misconduct does not include honest error or differences of opinion.
研究不正には、誠実な誤りや意見の相違を含まない。

「悪意のない不正行為は、mistake」とする解釈は間違いです。