岡山大学からの回答書の問題点と指摘2-各調査報告書に関して

岡山大学への質問の経緯は、こちらに書いてあります。

http://warbler.hatenablog.com/entry/2016/03/18/120500

 

1 公文書情報公開請求で部分開示して頂いた各調査報告書の内容について

2 公文書情報公開請求で部分開示して頂いた各調査報告書に記載の論文に関して

 

質問対象の論文の特定は調査報告書上の論文番号を指定し、質問内容については、基本的に私のブログで疑問点として指摘しているものとしました。

 

http://d.hatena.ne.jp/warbler/20150901/1441033645 

http://d.hatena.ne.jp/warbler/20150926/1443240118 

http://d.hatena.ne.jp/warbler/20151030/1446188658 

 

 <予備調査分>

(1)論文1

予備調査報告書

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岡山大学の回答書

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(問題点)

・回答書で、新たに図1Bの上段2パネルは別々の電気泳動写真を貼り合わせたと認めました。「Bの上段2パネルはいずれもレーン間に不自然な直線があり、貼り合わせている可能性がある」との告発者の指摘が正しかったのに、それを意図的に伏せた疑いが拭えません。

・予備調査委員会が4段目のパネルについて「他のパネルと泳動度が著しく異なっている」と判断しているのに対し、回答書では「3つのレーンにおいて…泳動度が異なっている」と予備調査委員会と異なる判断理由を出しています。

・回答書には、『「査読を受けて受理されている論文に対して合理的な指摘とは言えない」という判断は合理的ではない』という指摘に対する回答がされていません

 

予備調査報告書

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岡山大学の回答書

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(問題点)

・生データを確認していないという指摘に対し、「バンドの形態については必ずしも一貫性があるものではない」という論点をずらした回答であり、実験データの調査において基本的な確認事項である生データの確認をしていなかった事を事実上認めています

 

(2)論文2

予備調査報告書

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岡山大学の回答書

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(問題点)

・図のデータ表記が異なっているのであり、見やすさのためという説明では無理があります。

 

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(3)論文3

予備調査報告書

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岡山大学の回答書

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(問題点)

・不正調査の基本的な確認事項である生データの確認を怠って判定をしています。回答書では一致していないとしていますが、次に示すように不自然なほどかなり酷似しており、生データの確認が必要なレベルです。

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<専門家に解析を依頼>

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※プロファイルが酷似しており、やはり画像の使い回しの可能性を棄却できません。

 

(4)論文11と論文12

予備調査報告書

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岡山大学の回答書

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(問題点)

論文12の受賞紹介記事として医学界雑誌に掲載された論文11の表1と3が、論文12のTable1を元にしており、論文11の表2が論文12のTable3を元にしているという開示された予備調査報告書の情報から、該当する論文を突き止めました。

 

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・元論文12のTable1の患者と、論文11の表3の患者は、年齢・Pre-treatment PSA・Nadir PSA・PSAR(%)の各値が一致することから、同じ患者と考えられる。TR-PSAは、Table1は月(months)で表3は週(week)であり、Table1の数値を4倍すると表3の数値になり一致します。しかし、Pre-treatment PSADTとPre-treatment PSADTの数値が異なっています。PSADTはPSA (前立腺特異抗原)が2倍になるのに必要な時間であり、PSADTは定められた計算方法で算出されるので(計算式を以下に付記)、データを解析した時期や臨床的解釈の違いが生じる性質のものではありません。よって、回答書の説明には無理があります。PSADTの他の数値が一致しており、PSADTだけ算出結果が異なるのは不自然です。

 

【計算方法】

検査日1をD1、PSA値をP1、検査日2をD2、PSA値をP2とすると、

PSADT=(D2-D1)×log2/(logP2-logP1) で計算されます。

 

<本調査分>

(1)論文1

調査報告書

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岡山大学の回答書

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(問題点)

論文1は、Circulation 2008 118 2146-2155であることが開示されています。

 

本調査報告書が出された時点では、パネルIを差し替えた再訂正版は出されていませんでした。よって、調査報告書での「訂正後の論文におけるパネルB,G, I, J, Nは全て異なる構図である」というのは、やはり正しくありません。告発者の指摘が正しかったのに、論文に掲載された図と異なる画像データを解析業者に提出して「パネルIとJの細胞の配置が異なる」という判定を出させており、調査の誤魔化しが行われた疑念があります。

 

1. 2014年2月4日に訂正版が出され、パネルG・Nが差し替えられたと掲載誌から告知。

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2. 2015年7月7日に再訂正版が出され、パネルG・I・Nが差し替えられたと掲載誌から告知。

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2014年2月4の訂正版(不正疑義を告発されたのが2014年3月26日)

明るさ・コントラスト調整

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2015年7月7の再訂正版(本調査報告書が出されたのが2015年3月4

明るさ・コントラスト調整

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(2)論文30

調査報告書

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解析業者の報告書

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岡山大学の回答書

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(問題点)

・本調査委員会は、「パネルBとパネルCの写真に貼り付け操作は確認できない」とする解析業者の報告から、「データが貼り付け行為で合成されている」という告発者の指摘は合理的ではないと判断しています。

しかし、回答書では「各パネル内の12本のバンドの写真は1枚の連続的な写真ではない」と、本調査委員会とは全く異なる判断をしています。この矛盾はどうして生じたのでしょうか?

 

 2016年1月3日付の毎日新聞記事では、“大学によると、病院幹部から「1枚の連続的な写真ではない。代表的なバンドの写真を参考として添付した」と説明があった”と書かれています。

 このコメントについて、回答書では質問3に対する回答として「新聞に掲載されたとおりである」としており、岡山大学は誤報ではないことを認めています。

 

毎日新聞記事『論文不正告発に生データ見ず「適正」 岡山大調査委』

デジタル版 2016年1月3日 08時30分(最終更新 1月3日 08時39分)

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 本調査報告書の「画像貼り合わせ否定」は、毎日新聞が証言をとった「1枚の連続的な写真ではない」とする説明と全く異なっており、岡山大学の「早く報告する必要があり、報告書を簡潔にしようともしたため、言葉足らずな点があったかもしれない」という説明では容易に納得できるものではありません

 

なぜ本調査委員会は、論文著者側から貼り付け操作によって合成されたものだという説明を報告書作成前に受けていながら、貼り付け操作を否定した解析業者の報告の方を採用したのでしょうか。そして、回答書では「1枚の連続的な写真ではない」と判断を翻しています

 

※こうした経緯から本調査委員会が公正に判断したと思えず、調査報告書の信頼性が大きく揺らぎます。

 

(3)論文9

調査報告書

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当ブログでの指摘 

論文9図4について(下図は部分抜粋)

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warbler.hatenablog.com

Id-1のパネルについて、バックグラウンド部分をそれぞれフーリエ変換FFTすると一番右のレーン(Ad-REIC)だけバックグラウンドのパターンが大きく異なっている。

JPEGウィンドウの異なる画像が張り合わされている可能性

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岡山大学の回答書

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(問題点)

・平成27年のブログでのId-1のパネルに関する指摘は、新たな疑義として調査すべきものです。

インターネットで指摘された不正疑義は、正式な告発に準じた扱いをすることができるのは、文科省の「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」と岡山大学の「研究活動における不正行為防止等に関する規程」にも記されています。

 

文科省「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日決定版)

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文科省のガイドラインに沿って、岡山大学でも次の通り規定されています。

岡山県立大学の研究活動における不正行為防止等に関する規程 (平成 27 年 6 月 18 日)

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 従って、岡山大学はインターネット上の指摘に対して、正式な告発に準じて取り扱うことが可能であり、特に今回の場合は正式に岡山大学の広報・情報戦略室の室長に通報しています文科省のガイドラインの3-4③の要件も満たしており、岡山大学の規定に従い、調査委員会を設置して調査を開始できる状況にあります。