EMによる水質改善効果徹底検証(2)-日本橋川編
EM推進団体が河川の水質浄化に成功した事例として盛んに宣伝しているのが「日本橋川」でのEM菌投入活動です。一方で、実はEM菌投入効果は出ていないとする意見も出されています。果たしてどうなのでしょうか?
前回の沖館川の検証に続き、日本橋川についても長期的な水質検査データ(平成10年[1998年]度~平成27年[2015年]度)を東京都と千代田区から入手して検証をしました。徹底検証第二弾です。
東京都の検査データ(5か所): 和田見橋、落合橋、一休橋、柳橋、西河岸橋
千代田区の検査データ(5か所): 飯田橋、昌平橋、左衛門橋、堀留橋、常盤橋
・東京都と千代田区では水質検査の項目が少しずつ違っています。
※データが多くて最後まで見て行くのが大変なので、フライングして先に結論を書いてしまいますが、EM菌投入による水質改善効果は確認できませんでした。むしろ、日本橋川では他の神田川水系と同様に、最近は大腸菌群数が上昇してきています。
【神田川と日本橋川の水質検査データの解析】
日本橋川には2005年にEM団子投入開始され、2006年12月からEM活性液を堀留橋付近から毎週10t投入することが開始されました。神田川にもEM菌が投入されていますが、日本橋川ほどコンスタントには投入されていません。
従って、
A.日本橋川「堀留橋」「常盤橋」「西河岸橋」での2005年以前とそれ以降の水質比較
B.上流にある「和田見橋」「落合橋」「一休橋」「飯田橋」と日本橋川3地点の比較
C.日本橋川と分かれた先にある神田川の「昌平橋」「左衛門橋」「柳橋」との比較
以上の3組の比較によって、EM菌投入効果を見出すことが可能です。
それでは、各水質検査項目について比較していきます。
〔pHを比較〕
※A, B, Cどの組み合わせの比較でも明瞭な差は見いだせません。
〔BODを比較〕
※A, B, Cどの組み合わせの比較でも明瞭な差は見いだせません。
〔CODを比較〕
※A, B, Cどの組み合わせの比較でも明瞭な差は見いだせません。
〔全窒素を比較〕
※A, B, Cどの組み合わせの比較でも明瞭な差は見いだせません。
〔全リンを比較〕
※A, B, Cどの組み合わせの比較でも明瞭な差は見いだせません。
〔臭気の強さを比較〕
東京都の検査データでは、臭気の強さが数値化されているので、これを使用しました。
※A, B, Cどの組み合わせの比較でも明瞭な差は見いだせません。
〔大腸菌群数を比較〕
千代田区の水質検査では、大腸菌群数が計測されています。
※A, B, Cどの組み合わせの比較でも明瞭な差は見いだせません。
EM菌をコンスタントに投入している日本橋川の各調査地点で、上流や神田川水系の他の調査地点よりも大腸菌群の数を減らす効果は見いだせません。むしろ、EM菌の投入を始めた2005年以降は他の調査地点と同様に大腸菌群数が増えてきています。
【結論】
A.EM菌投入が開始された2005年以前と以降での傾向は特に変化していない。
B.日本橋川のどの調査地点でも上流域とほぼ同じ傾向で推移をしている。
C.日本橋川と分かれた先にある各調査地点ともほとんど差が見られない。
※以上の結果から、EM菌による水質改善効果は、どの組み合わせに関しても確認することはできませんでした。
全国的に2005年頃から河川などへの水質改善効果を期待してEM菌投入を開始した所が多く、数年間では効果の有無の判断がつかないので、はっきりとは効果を感じられない場合でも投入を継続しているケースも多いと思います。投入開始から10年以上経った現在、長期的な評価も可能になってきました。日本橋川の事例について、長期的なデータによって検証したところ、残念ながら水質浄化効果は見いだせませんでした。河川へのEM投入継続について迷っている方々がおられましたら、この検証データと前回の沖館川での検証データを、今後のご判断の材料の1つとしてお使い下さい。
【おまけ】
日本橋川が流れ出る東京湾内湾の水質検査データを東京都より入手しました。
赤丸で印を付けた5番(ST5)と11番(ST11)の平成10年度~平成26年度のCOD、全窒素、全リン、大腸菌群数の検査値の推移です。両検査地点では下層に比べて上層の水質が悪いのが分かります。淡水である河川水は上層域に影響していると思われますが、いずれもEM菌が投入され始めた2005年以降、明瞭に水質が改善されたとは言えない結果でした。
*次回は、河川と比べて水の流れが少ない池へのEM菌投入事例についてデータに基づいた検証をしていきます。