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板柳町の報告書でのリンゴ腐らん病」対策に関する佐野教授による経緯の説明とご意見

 前記事「EMとその類似商品について、効果の検証が不確かな病虫害対策の宣伝にも注意して下さい」で取り上げた、青森県北津軽郡板柳町が株式会社縄文環境開発に委託した「環境保全型農業推進事業業務委託」最終年度の報告書に「リンゴ腐らん病対策」に関してお名前が出されている弘前大学の佐野教授にこの時の経緯についてご説明を頂きました。

 尚、前記事は掲載前に佐野教授に原稿を見て頂き内容について確認をとっております。

 板柳町のこの報告書などを読み、佐野教授がこの業者によるリンゴ腐らん病対策法を肯定的に評価していると思っている方達もおりますが、実際はどうなのか質問をしました。

 青字が佐野教授によるご返答です。

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1.実証試験
循環型有機農法の実践 
(2)りんご の項目より
「そして3年目は、弘前大学教授・農学博士の佐野輝男先生が一年を通じて、我々の実験を検証して下さった」
「ある時には、弘前大学の学生さんを同道して、学生に説明しながら検証して下さった」
「シーズンを終えて、ご挨拶に伺った際には、自らお茶を入れて下さり、終始笑顔で最高級の応対をして頂き、恐縮したものである」
 以上の様に、佐野先生と懇意にしている様子が書かれていますが、実際はどうでしたでしょうか?

 → 上記の記載はほぼ間違いありません。電話でもお話しましたが、大学及び所属学部の社会連携・地域連携ご担当の先生からの紹介で協力を依頼されて開始したものあり、できる範囲で先方に失礼のないように誠意を持って対応しています。ただ、「最高級の対応」という表現はどうも誇張しすぎですね(他意なく、本当にそう思ってもらえれば有り難いですが、、)。私は、他の外来者の方々も含めて全て同じように友好的に対応しています。
因みに、協力依頼は今年の3月で終了し、現在まで何もない状態ですが、個人的に特に関係が悪くなったとかどうのとかいうことではありません。ただ、内容物・成分等が全く不明の資材に関して、私共が今後引き続き科学的な観点から協力することは不可能と感じています。

 報告書には佐野先生のご意見として、
「この方法は、何よりも作業が簡単なことが光っている。今後なおも実証試験を行って、数多くの成功例を作る必要がありますね。ひょっとしたら、梨の腐乱病にも効くかもしれないなあ」
とありますが、これについてはどうでしょうか?

 → 提案されている治療作業は簡単で、泥巻き法や病患部の削り取り処理をする場合のトップジンMペーストに比べても作業は大変簡単です。この点は事実です。ただ、「光っている」というのは私の言葉ではなく、後でつけられた修飾語です。「ひょっとしたら、梨の腐乱病にも効くかもしれないなあ」というつぶやきのようなコメントは、リンゴの腐らん病に効けば、梨の腐らん病にも効くか?という質問に、私が可能性はある旨をコメントしたことに由来しているものと思います。原稿のコメントで問題ありません


 病虫害対策に効果の不確かな方法を効果があるかの様に宣伝するのは、それを信じた人達が実践することで病虫害をくい止めることができずに広めてしまう恐れがあり、その方法を選ばなかった人達にまで被害を与える可能性があります。
これについては如何でしょうか?

 → 複雑な状況を含んでいますので、少し長々と書きます。多少論点がずれるかもしれません。
最初のご質問への回答にも記載したとおり、この課題は大学及び学部の社会・地域連携ご担当の方からの依頼で開始したものであり、もともと板柳市からの協力依頼に応えるものと位置付けられます。リンゴの腐らん病というのは、ご存知のように青森では特に被害の大きな病害で、既にいくつかの効果の高い治療・処理方法が普及しているものの、栽培現場では依然としてより簡便で効果の高い治療方法の開発を望む声が根強いのが現状です。

(補足)青森県産業技術センターりんご研究所の担当者によると、現在最も効果が高い薬剤である「トップジンMペースト」には薬剤耐性菌が出始めており、それに代わる次の効果的な薬剤の開発が急がれているとのことです。もしリンゴ腐らん病が今の状況で広まる事態となると「トップジンMペースト」を使う頻度が高くなることで薬剤耐性菌が蔓延する恐れもあり、その点からもリンゴ腐らん病の発生をできるだけ抑えておく必要があります。

 今回の課題も、このような状況の中、萌芽的な試みとしてEM菌(会社ではEM菌とは別物であると宣伝しているようです)を活用してより簡便で効果の高い方法を開発しようとする点では評価できます。ただ、ご指摘のように、第3者による科学的な検証は全くなされておらず、私のような大学の研究者が処理済みのりんご樹(資材の準備・調製及び治療処理現場には立ち会っていない)のみを数本見せていただいた程度では効果云々を言うにはほど遠い状況です。また、この資材は農薬ではありませんので、効果を謳って(或は効果を匂わせて)販売することはできません。違法になります。これらは会社側も十分にご存知のことです。

 つまり、この課題の現状は、最初の課題提起がなされた段階で、資材の適性や効果の検証も含めた全てがこれから開始されなければならない状態です。従って、今後、どのように進めようとしているのかがポイントで、例えば板柳町が町ぐるみで支援して、この会社が資材を無償で提供し、より多数の農家さんにモニターとなってもらい効果の有無を栽培者自身が評価しながら、現場の課題を解決しようとするような方向にあれば、望ましい姿と思います。ただ、片瀬さんが心配されているように、単にEM菌の販売が目的で、効果が不確かな状況にも拘らず、私のような大学の研究者の名前を出すことで権威付けをして乗り切り、販売を推進してしまえば、より病気を広めてしまう危険性もでてくると思います。

 以上のことをご理解いただいて、私のコメントを入れるとすると、
「平成23年4月13日、5月28日、10月11日の3回、(株)縄文環境開発・担当者さんの案内で、板柳町の4園で菌培養液をスプレーしたという処置済樹(各園1−2樹)の処理後の状況を観察したのみで、「効果の検証」をしたわけではありません。効果があるかどうかなど、現時点では全くコメントできません。」
ということになりますが、既に作成されている原稿の記載で全く問題ありません

(補足)縄文開発のフラン病対策「FT-12」は無償提供ではなく、500mlで3,300円(消費税別)・1Lで6,000円(消費税別)の価格で商品として農家に販売されています。


 この業者によると、リンゴ腐らん病の治癒の確認は、見た目と患部を触って乾燥していることで判断したということです。また、モニター農家の方で患部より先端側の枝の元気が回復したことで「効果有り」と判断してもらっているという説明でした。これについてはどうでしょうか?

→ 私が同行した時にも、同様です。私自身、見た目と患部を触って乾燥しているか、柔らかくないか、などを現地で観察して進展していないかどうかを観察しています。あくまで外観観察で、病原菌の分離等の確定診断に相当する部分は行なっていません。従って原稿の記載で問題ありません

文責:佐野 輝男 平成24年11月11日

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以上、佐野教授のご返答を紹介しました。