東日本大震災後のEM関係団体の広まり
原発事故による放射線に対する不安から、放射性物質の除染効果を宣伝しているEMが広まっているという印象があり、実際にどうなのかを調べてみました。
昨年10月に、ツイッターでEMを初めて知った時期(東日本大震災の何年前か)と、何に関連して知ったのか等についてアンケートをとった結果です。100人近くから回答を頂きましたが、いつ頃知ったのかという記憶がしっかりしていた60人の結果をまとめると、次の様になりました。
このアンケートで判断するのは人数的にまだ不充分だと思いますが、
最初は宣伝本を読んだことで知る機会があったくらいでしたが、次第に実践する人達が増えて農業用途から広まって、さらに環境対策の目的でも広まっていった感じです。(堆肥は、農業用途の他に、家庭から出るゴミの減量という環境対策での使用もあります)
東日本大震災後は、原発事故と絡んで放射能除染に関連して知ったという人が半数を占めています。批判というのは、EMについての批判意見を見聞きしたことで初めてEMを知ったというケースです。
EM関係団体である『地球環境・共生ネットワーク(U-ネット) 』の「善循環の輪」という、EM活用団体として登録されている団体数の推移を調べて見ました。入手した資料は、2010年3月、2011年7月、2012年3月、2012年6月、2012年11月です。(もし、これ以外の団体数データをお持ちの方がいらしたら、お知らせ下さい)『地球環境・共生ネットワーク(U-ネット) 』のHPには、2012年11月現在の参加団体が公表されています。 http://www.unet.or.jp/newsletter/
善環境の輪MAP http://www.unet.or.jp/docs/zenjunkan_map.pdf
グラフにしてみます。
まず、全体数の推移です。2011年7月〜2012年3月にかけて増え方が大きくなっています。
震災前の2010年3月と、最近の2012年11月の団体数の多い順での県別データを比較します。
福島県は、元々EM活用団体が多かったのですが、震災後に倍増している様です。
2010年3月〜2012年11月の期間で、増加数の多い順にグラフにすると、次の様になります。
県名に色づけをしましたが、赤とオレンジ色は、原発事故による放射性物質の汚染が意識された県です。静岡県は放射性物質の汚染は低かったのですが、一時期お茶の検査値が高く出て騒がれたことから、放射能汚染が気にされた県の仲間に入れました。群馬県を除いて赤とオレンジ色の県は増加数が上位になっています。
青色の県は、放射性物質の汚染が意識された地域ではなく、増加には別の要因が考えられます。
群馬県は放射能汚染が比較的あった県なのですが、EMに参加する団体は大きく増えなかった様です。群馬県はEMが元々不人気な地域というわけでもなく、増えなかった理由は分かりません。
団体数の増加が多かった上位5県の2010年3月〜2012年11の推移です。
全体的に2011年7月〜2012年3月にかけて大きく増えていますが、福島県の増加が特に目立ちます。
福島県・茨城県・千葉県での増加は、やはり放射能汚染と関係しているのではないでしょうか。
事故を起こした原発から遠い愛知県・三重県での団体増加数は、環境浄化活動などの別な要因もあるのではないかと考えて調べてみました。
EM関係の団体は、2010年からEM提唱者の比嘉氏の呼び掛けによって、「海の日」全国一斉EM団子・EM活性液投入という行事を行っています。環境浄化の目的でEMを取り入れている団体は、この行事に積極的に参加すると思われます。
主催者側から公表された、この行事の参加団体数と参加者数です。
第1回2010年(震災前)と第3回2012年のこの行事への参加団体数と参加者数の上位順の表に整理しました。
(第2回は、主催側の最終報告で未報告となっている県が多いので省きました)
愛知県と三重県は参加団体数が震災前から多く、環境活動に関連してEMを取り入れて活動してきた団体が多いことが分かります。愛知県では、参加者数が2011年から大幅に増えています。
参加団体数は両県とも減っていますが、参加人数は減っていないので衰退というよりも統合によって団体数が減った可能性があります。
福島県での参加団体数が大きく増えているのは、震災後にEMを取り入れた活動を始めた団体の参入によるものだろうと思われます。「善循環の輪」への参加団体数の方がずっと多く、農業目的でのEM利用が主であったと考えられます。
大分県は、EM投入行事の参加は2010年には0であったのに、2011年から6団体と増えています。「善循環の輪」の参加団体も同様に2010年は0であったのに2012年3月から10団体と増えています。
茨城県、千葉県、栃木県、静岡県では、「善循環の輪」の参加団体数が増えましたが、EMの河川投入行事への参加は特に増えていないことから、これらの県では環境活動目的で新たに参入した団体は少ないのではないかと思われます。
東京は、「海の日」EM投入行事に参加した団体数は少ないのですが、参加人数がとても多く、イベントに集まる人が多い特徴が見受けられます。
<まとめ>
数字は、2010年(震災前)の団体数→2012年(震災後)の団体数 の変化です。
(海の日EM投入行事の参加団体を[EM投入団体]と略しました)
・福島 [善循環の輪]98→176:[EM投入団体]10→37
元々農業関係でEMを取り入れてきた団体が多く、震災後は放射能汚染対策としてさらにEMを取り入れた活動をする団体が大幅に増え、これに伴ってEMの環境活動に参加する団体も増えたのではないかと推定。
・茨城県 [善循環の輪]49→72 [EM投入団体]9→9
・栃木県 [善循環の輪]17→27 [EM投入団体]5→5
・千葉県 [善循環の輪]11→24 [EM投入団体]1→5
・静岡県 [善循環の輪] 5→16 [EM投入団体]5→3
4県とも、環境活動への参加は特に増えていないので、新たな参入は放射能汚染対策(含農業)が主だろうと推定。
・愛知県 [善循環の輪]27→45 [EM投入団体]61→42
・三重県 [善循環の輪]26→39 [EM投入団体]68→54
震災前からEMによる環境活動が盛ん。EM投入団体数は震災後に減っているが、EM投入行事の参加人数は減っていない(愛知県はむしろ増えている)ので衰退というよりも統合によって団体数が減った可能性あり。震災後は「善循環の輪」に登録する団体が増えた。
・大分県:[善循環の輪]0→10 [EM投入団体]0→6
現在の団体は全て新規参入。農業と環境のどちらがメインの活動かは不明。
・群馬県 [善循環の輪]22→23 [EM投入団体]1→1
放射能汚染が気にされた県であるが、「善循環の輪」に参加するEM団体は増えなかった。理由は不明。EM投入行事に参加しているのは1団体だけであり参加人数も少なく、環境活動よりも農業関係でEMが取り入れられていると推定。
※EM推進団体が公表している「善循環の輪」と「海の日 EM投入行事」の参加団体の資料を基にしましたが、他に参考となる情報をお持ちの方がおられましたら教えて下さい。
群馬県でEM活動団体が震災後に増えなかった理由を模索中。
・EMで作物の放射性セシウムの吸収を低減できるか?
http://d.hatena.ne.jp/warbler/20120907/1346997502
・EMの「抗酸化波動」によって土壌の放射性セシウムを消滅できる?
http://d.hatena.ne.jp/warbler/20120923/1348388554
・EM(有用微生物群)の何が問題なのか
http://d.hatena.ne.jp/warbler/20120927/1348702768