STAP現象の検証実験に関する会見記録 2014年4月7日と8月27日

<STAP現象の検証実験>
4/7日と8/27に行われた会見での、質疑応答での検証チーム側の応答の内容について「記録」としてまとめました。
記事が長くなってしまうので記者側の質疑は省きました。
(坪井理事、相澤特別顧問、丹羽プロジェクトリーダー、小保方ユニットリーダーの敬称を略させて頂きました)
※私からの質疑と補足、意見を入れています。
応答の内容は冗長にならないように、全般に要約しています。

実験総括責任者:
独立行政法人理化学研究所発生・再生科学総合研究センター
特別顧問(相澤研究ユニット研究ユニットリーダー兼務) 相澤慎一

研究実施責任者:
独立行政法人理化学研究所発生・再生科学総合研究センター
多能性幹細胞研究プロジェクトプロジェクトリーダー丹羽仁史


[2014年4月7日]検証の実施計画

・STAP 現象の検証の実施について http://www3.riken.jp/stap/j/e24document7.pdf
(参考)
スライド資料 https://www.youtube.com/watch?v=tFcF_UietRM
 動画:FNN  https://www.youtube.com/watch?v=hYLzHG87yU4
         https://www.youtube.com/watch?v=kJyXSJ03-og
         https://www.youtube.com/watch?v=83LKlS8h8vI

相澤:検証実験は、研究者として将来、科学の歴史の中で振り返って批判をされる時、その批判に答えられる様な形で検証をやりたいと願っている。

相澤理研自らが検証することを第一段階とする。細胞レベルの検証とマウスレベルの検証で行う。細胞レベルでの検証は丹羽さんが実績と信頼があり、この責任を負う。マウスレベルでの検証の責任は自分が負う。

丹羽:STAP現象については、一切の予断無く検証に努めていく。

丹羽:STAP現象を検証するという事は、STAP細胞における胎児・胎盤における寄与度を検討することになる。

丹羽胚盤胞注入によるキメラ胚形成能をもって評価することで、最終的な判断材料としたい。理由は、多能性の最も厳密な評価であるため。

丹羽ES細胞でうっすら光って見えているのは胎児側の胎盤で、決してこれを超えて胎盤側に寄与することはない。ESからTSになる中間過程で、胎児にも胎盤にもなる細胞というのはこれまで確認できていない。しかし、2例の報告がある。
この2例については、まだ自らの手で検証したこともなく、材料も持ち合わせていない。

丹羽ES細胞の経験からすると、数個の細胞がキメラ胚に寄与する。
TCR再構成のある細胞がキメラ胚になるのは確率論的なもの。

丹羽:STAP幹細胞8株の中にTCR再構成を持つものが無かったのは、計算上で有意なのどうかはまだ分からない。

丹羽:2013年1月にこの論文に参画。主に、論文の構成に関する助言と、専門とする多能性幹細胞方面からの助言をして、論文が適正に表現されるよう助言をした。査読コメントに対する助言も同様に行った。

丹羽:論文投稿発表の時点では、目の前で出来たという事を確認はした。若山先生が、キメラを作る実験をきっちりとされていた。そういうことで、その時点では納得した。
現時点では、論文の撤回に同意をしている。この論文に関する知見は更地に戻った。しかし、まだあるかどうか分からないというのが、現在のスタンス。

丹羽:あるかないかを知りたいと思い、この検証実験に参加することにした。

丹羽:出来ていく過程を目の前で見た。細胞を経時観察したデータに関して、複数の映像データで確認をした。

丹羽:Protocol Exchangeは、あくまで本体の論文の補足情報。あの時点で、小保方さんによる対応は限界に達していた。再現できない理由を、誰かがいち早く出す必要があった。それを出さないと、研究者コミュニティーにおける再現実験が情報が足りなくて明らかに阻害されると考えた。

丹羽:論文に関しては、直接実験で手を動かすという関与はせず、あくまで助言を与えるという立場であった。

丹羽:論文発表以降、もちろん小保方研におけるSTAP細胞作製実験には何度か立ち会っている。そういう確認をしたからこそ、Protocol Exchangeを書くことが可能であった。

相澤:我々は、STAP細胞が再現できると信じてやるのではない。もし、細胞レベルの検証は丹羽さんがやってできれば、多くのコミュニティーの人達には信じてもらえるだろうし、できなければ多くの方はできないと思ってもらえると思う。小保方さんなしでも、丹羽さんの結果は信頼してもらえるだろうと考える。

丹羽:少なくとも現在我々が得ているものが、Protocol Exchangeに示した範囲。これを超える情報でヒントが得られた場合は、新たに順次公開していく。この検証は、我々ができた事をもって完結しません。我々がまずやってみて、上手く行きそうだったら、第三者にやってみてもらう。第三者も再現をとれたことをもって、我々の検証は完結すると考えている。その為にも、有益な情報が得られたら適宜公開していく。

相澤:小保方さんからは、現在いろいろな情報を得られる状況にはなく、期待できない。もし、我々の手で再現実験ができないという事になれば、小保方さんの協力が得られるものならば得たいと考える。しかし、検証は小保方さんを加えず、あくまでも我々が責任をもって行い、小保方さんに情報を求めることはあっても、検証チームの一員として彼女を加えて検証するということはない。

丹羽:最初に投稿されたのが、2012年4月。その後、再投稿するまでにデータを収集して、それが終わったぐらいのタイミングが2013年1月。その時点で既に、ほとんどのデータは存在していた。論文の構成の助言、さらに多能性の検証という細かい観点でサジェスチョンを与えて実験材料を一部提供した。

丹羽:論文が既に投稿されて、一度ブラッシュアップされた完成したデータが存在していたので、実験ノートなどの生データを確認するなどは、参画した初期にはしていなかった。

丹羽:現段階は1つの仮説。笹井さんがSTAP現象でなければ説明できないとした理由として、おそらく、胎児と胎盤に寄与する細胞というのは、その時点ではまだ報告が1例しかなかったし、とうてい中に組み込めるようなものではありえなかった。Oct3が発現するところまでは見た。私は若山さんのキメラ実験に信頼を置いた。しかし、これらの事象が全てこの仮説で繋がるのかどうかは分からない。検証によって確かめたい。

相澤:この計画は、少なくともこの1年でやる中核となる実験。それ以外のことをやらない、というわけではない。FI幹細胞についても、進捗に合わせてやる可能性はある。

丹羽:Oct3-GFPの発現は、あくまで1つの指標。最終的には、キメラ形成能でもって多能性を判断する。指標として使う上で、自家蛍光と可能な限り切り分ける作業は必要だが、Oct3-GFPの蛍光が確認されたとして、その時点で多能性の判断はしない。

丹羽:2倍体キメラから作製したマウスでは、TCR再構成があっても、宿主側のマウスのものと区別がつかない。4倍体キメラだとPCR検出が可能であるが、それがとても微弱な形で出ていたというのが実際のところ。同パターンのTCR再構成が、同じSTAP細胞から作られたSTAP幹細胞でも確認できたらだパーフェクトであったが、そこまで検討が至っていなかった。
正直、データとして甘い。それは率直に認める。
一方、TCR再構成のない分化細胞から多能性細胞ができたと考えることも可能で、実際それで査読をパスした。STAP幹細胞にTCR再構成がみられないことは既に分かっていた。

丹羽:私は論文の撤回をする意志決定をしたので、修正も現時点では意味が無い。

[片瀬質疑]
自家蛍光との区別の確認で、GFPの蛍光と区別するコントロール実験としてGFP遺伝子を持たないWTの細胞を同様に処理したものと比較することもやってみて欲しい。
蛍光観察だけだと自家蛍光などの紛らわしいものがあるので、他にGFP特異抗体を用いて検出する手法をあわせて行ってみてはどうか。

丹羽:論文において自家蛍光との切り分けが不十分であったかどうかは、自分には分からない。キメラマウス作製は、Oct3-GFP蛍光は指標とせず、細胞の形態で見分けて行うので、自家蛍光との誤認があってもその段階では判定を間違えない。
フィルターを切り替えて自家蛍光と区別するという、通常の方法は行っている。

[片瀬質疑]
Cre-LoxPシステムの効率の確認。

相澤:少なくとも90%以上の効率では起こると考えている。自家蛍光の問題のコントロール実験はご指摘の通りで、そういう風に実験を進めさせて頂くことになる。

丹羽:WTのマウスを用いたSTAP細胞の誘導の検討も行っており、その過程においても自家蛍光がどの様に認められるかというデータもとって確認を進めている。

[片瀬質疑]
「血液細胞以外の酸処理によるSTAP細胞誘導」のグラフの色の間違いの指摘と誘導効率の確認。


丹羽
:色が違ってますが、右から3番目のバーがLiver。CD45+細胞のおよそ半分の効率になる。

[片瀬質疑]
検証費用がどこから出されるかについて質問。

坪井:費用は理化学研究所の本部の経費としてやる事を予定している。

丹羽プロトコール論文は、元のNature論文に記載した事と基本的に変わらない。各ステップでの注意点について補足した。それまでにメールで受けた質問などを検討して小保方さんとディスカッションした上で、改めて科学コミュニティーに伝える必要がある内容を間に埋めていった。

丹羽:小保方さんがリンパ球採取からSTAP細胞までの一連の流れを自分の目で確認している。3回くらい。

相澤:丹羽研の研究員はそれぞれ研究テーマをもってやっている。彼らにやらせることはない。新たに2名の専属のテクニカルスタッフを雇用して、丹羽さんが彼らを指導しながらやっていける。

相澤:残っている試料について、これがES細胞であったのか、エピステムセルの混入であったのかなどを調べることは、この検証チームではしない。

相澤:現在、笹井さんと小保方さんは、再現実験をできる状況にない。彼らがやった再現実験も信用されない。検証実験でSTAP細胞ができなかった時に、どの様にできなかったかを科学の歴史に照らして刻んでいく事が、我々にとって重要なテーマである。
しかるべき段階にきたら、第三者、できれば山中さんの様な人に立ち会いの下にやらせてもらいたい。

丹羽:若山さんが小保方さんからもらった細胞は、きわめて均一な細胞集団で、それをマイクロナイフで切って注入したと聞いている。私自身、ES細胞とTS細胞を混ぜて培養したことがあるが、わずか数日のうちに分離してしまう。発現しているカドヘリンの違いではないか。

丹羽:分離する前は、ほとんど接着しない。接着が進みながら分離していく。接着が完了した時点では分離している。ESとTSは増殖因子の要求性も異なり、それぞれの分化能を維持したまま培養を続けるのはかなり困難。

丹羽:ライブイメージングについて、マクロファージが死細胞を食べている様子ではないかという意見もあるが、どうやって見分けられるのか。

丹羽:STAP幹細胞の作製も計画には含まれている。

相澤:我々が検証して再現できなかった場合、何らかの形で小保方さんが実験をできる様な状況に戻ってもらい、彼女自身の手で検証するチャンスを与えないまま、一方的にないというのは、なかなか辛い。

丹羽:小保方さんとは、3月の後半に会ったのが最後。
3月の後半に会ったは、一連の試料保全の後始末の時だった。

丹羽:改められたデータに関しては問題はないと思った。

丹羽
:Oct-GFPの発現の後に、さらに細胞塊が大きくなっていくなっていく事が重要であると若山さんがやっていたプロトコールにあり、今、その部分が上手く行くかということで、条件の検討をしている。



[2014年8月27日]検証の中間報告

・STAP現象の検証の中間報告 http://www3.riken.jp/stap/j/m12document20.pdf
(参考)スライド資料 http://www3.riken.jp/stap/j/i3document21.pdf
     動画:FNN  https://www.youtube.com/watch?v=tFcF_UietRM

相澤:検証実験のほとんどは検証途中であり、皆様にご報告する段階に至っていない。その中で、当プロジェクトが一定の判断をするに至った検討について丹羽より報告させて頂く。最終結論がどの様なものであるか現在判断できない大半の検討中の課題については、この場で報告できない。

丹羽:現段階で科学的確度をもって報告できる内容に関して中間報告をする。本検証実験の目的はSTAP現象が存在するか否かを1から検証することにある。
この為の手法としてまず1つは論文に記載された方法で再現性を検証する。主に脾臓から採取したリンパ球からの多能性誘導の検証になる。
もう1つは、論文に記載された方法とは異なる、より厳密な細胞追跡法を用いてSTAP現象の有無を検証する事にある。

丹羽:論文に記載された主なSTAP細胞の手順を改めて説明する。主に論文で使われているデータは脾臓細胞を用いている。マウスの遺伝的背景はC57BL/6で、Oct3/4-GFPという多能性マーカーが外来遺伝子として導入されている。このトランスジェニックマウスの生後5日目から10日目の脾臓を採取して、細胞を分散しCD45陽性細胞をFACSを用いて採取する。
今回のこれまでの検証実験においては、簡便化のためにLympholyteというリンパ球分離溶液を用いた遠心分離法により赤血球を除去する方法を用いている。この方法によっても、FACS選別に匹敵するCD45陽性細胞の濃縮が得られることを確認している。
この様にして得られたCD45陽性の血液細胞に弱酸性処理を行う。論文の記載通りに塩酸を用いpH5.7付近の弱酸性化を行う。その後、酸性溶液を除去して新しい培養液に懸濁して約1週間培養する。
論文に記載はないが、我々が入手した別のプロトコールに繊維芽細胞増殖因子添加というものがあったので、その有無の効果についても見ている。

丹羽:まず、どの程度の量の塩酸を加えれば弱酸性条件が達成できるかに関して、厳密に検討した。論文に記載されたプロトコールでは、希釈塩酸溶液をHBSSという緩衝液の中に一定量添加することによって弱酸性条件を作っている。記載プロトコールの現法ではこの希釈塩酸溶液6μlを500μlの緩衝液に添加することによりpH5.7の弱酸性が達成できるという風にあったが、数回検討したところ、この条件ではまだpHが高めであり10μlから12μlの間でpH5.7付近になることが分かった。
そこで、現法の6μlとおよそpH5.7になる10μlの2点で主に検討した。

丹羽:検出に用いるOct3/4-GFPのトランスジェニックマウスに関して改めて説明する。このトランスジェニックマウスは、本来17番染色体にあり多能性を獲得した細胞あるいは元々多能性のある細胞で極めて特異的に発現しているOct3/4遺伝子の遺伝子ゲノム領域をとってきて、その中にOct3/4の制御領域から発現する様な形でGFP遺伝子を挿入した人工遺伝子を作製し、これをマウス受精卵に注入して得られたトランスジェニックマウスである。
この人工遺伝子は複数ゲノムのある場所に導入されていると考えられるが、その挿入部位に関してはまだ明らかにはなっていない。

丹羽:初期化によりSTAP様細胞が誘導されたことを確認する方法としては、論文記載通り、1つには特徴的な浮遊細胞塊の出現、もう1つは浮遊細胞塊におけるマーカー遺伝子であるOct3/4-GFPからのGFPの発現である。既に取り下げられた論文であるが、論文記載の写真ではこの様に細胞塊においてGFPの発現が観察された事が報告されている。

丹羽脾臓細胞を弱酸性条件で処理した後に培養した時に、細胞塊が得られるかどうかについて検討した。左が6μlの希釈塩酸溶液の添加で約pH6.7〜7.0での処理を行ったもの、右は10μlの添加でpH5.7〜6.0での処理を行ったものである。
それぞれ培養7日目の脾臓細胞の写真。
10μlの側で顕著だが、個数は少ないが本来凝集するはずのない血液細胞が凝集した細胞塊が観察された。
この様な細胞塊がOct3/4-GFPの蛍光を発しているかというのが、次の検討になる。



丹羽
GFPは極めて特異的な波長域の蛍光を発する。蛍光というのは照射した光とは別の波長の光を発するという現象で、これはコントロールのGFPを発現するES細胞の蛍光顕微鏡観察像であるが、緑色蛍光フィルターを通して観察すると緑色の蛍光が検出される。これに対して、波長のずれた赤色域の観察フィルターを通すと、この様に蛍光は全く観察できない。これが本来のGFPが発する蛍光の特徴である。

丹羽脾臓から得られた細胞塊においては、緑色の蛍光は確かに観察されるが、同時に赤色の蛍光フィルターを通しても蛍光シグナルが観察された。この様に緑色と赤色の両方の蛍光を発する状態というのは、特異的なGFPの蛍光というよりも、むしろ自家蛍光と呼ばれる非特異的な蛍光像であると判断される。
ただ、この写真をもって緑色の本来のGFPの蛍光が無いのか?ということまでは言い切ることはできない。

[片瀬意見]
Oct3/4-GFP遺伝子導入をしていないWTのC57BL/6系マウスの脾臓を使っても同様な強さの非特異的蛍光(自家蛍光)が見られたのかどうか、興味がある。画像データが残されているのなら見てみたい。


丹羽:しかし、C57BL/6マウスの脾臓から塩酸処理で得られた細胞集団を他の方法で解析したところ、蛍光顕微鏡だけではなく、論文記載の方法によるセルソーターを用いた解析においてもGFPの特異的な蛍光を明確に検出することはこれまでできていない。
また、定量PCR法を用いた遺伝子発現解析で、細胞が本来持っている内在性Oct3/4遺伝子の発現があるかどうかも検討したが、有意な発現上昇はこれまで検出できていない。
この細胞塊を免疫染色法を用いて内在性Oct3/4から発現したタンパク質があるかどうかについても検討したが、これまでのところ検出には至っていない。

[片瀬補足]
C57BL/6マウスの脾臓細胞を弱酸性処理する方法は、論文に記載された基本的なSTAP細胞の誘導方法であり、多能性マーカーであるOct3/4-GFPの発現が再現できなかった事はSTAP論文が根本的な部分から信頼性がない事を示している。
これまでにも世界中で多くの研究者が追試を試みたが、まだ誰も成功していない。

丹羽:現在進行中の後半の論文記載にない方法による検証について。4月に説明した様に分化細胞から多能性細胞が誘導されることを、どの様にして科学的厳密性を担保して検証するかというのが1つの課題。そのためにとっているのが、分化細胞に特異的にDNA組換え酵素であるCreという遺伝子産物を発現させ、分化細胞を恒常的に追跡するという方法。肝臓の実質細胞を標識する方法を一例として挙げる。肝臓の実質細胞で特異的に発現しているアルブミンという遺伝子の発現制御領域の下にCreを繋いだ人工遺伝子を持つマウスと、もう一方でCreが働く事でスイッチがONになる人工遺伝子を持つマウスを用意する。
これらを交配した子孫マウスには肝臓の実質細胞でのみCreが働きGFP遺伝子のスイッチが入る。その後、このスイッチは入ったままでGFPを持続的に発現する。
この細胞がその後初期化され他の細胞運命を辿っても追跡可能となる。

丹羽:現在、この実験系の構築が完了した段階。1つは心臓の筋肉が特異的に標識されたトランスジェニックマウスで、確かに心臓でGFPが発現している。
もう1つは肝実質細胞をGFPで恒常的な標識をしたもので、導入遺伝子をもつマウスでは肝臓で特異的にGFPが発現していることを確認している。
現在、これらの分化細胞標識系は確立が完了しており、これらのマウスからのSTAP様細胞の誘導に関して当初の計画通り実験を進めている最中。当初の計画に従って、STAP様細胞の誘導が達成されれば、その多能性の検証に実験を進めていく予定。

丹羽:前半部分の脾臓細胞に関する検討は、現時点でC57BL/6系統のマウス遺伝背景においてはポジティブな結果を得ていない。今後、別の遺伝的背景のマウスで同様の検討を進めて行く予定。
今日報告した範囲は塩酸を用いた弱酸性条件の検討だが、論文には弱酸性条件によるストレス処理の他に、トリチュレーションと呼ばれる細いガラス管を通した機械的刺激の方法、あるいはストレプトリジンを用いて細胞膜に穴を開ける方法も記載されており、これらの方法に関しても現在一部進めているが順次検討する予定。

[片瀬補足]
既にトリチュレーションによるストレス処理でもSTAP細胞の誘導を試みた研究者達もいるが、この方法によっても追試成功の報告はまだされていない。また、脾臓細胞以外の細胞でも試した研究者達もいるが、いずれも成功していない。

相澤C57BL/6系マウス由来の脾臓について弱塩酸処理ではSTAP様細胞塊の出現を認めることはできなかった。そこで、小保方には丹羽が再現できなかったこの条件、脾臓について弱塩酸処理によるOct陽性細胞塊形成を検討させる。11月末まであまり時間がないので、第三者立会人の日程調整がつき次第、検証実験を開始させたい。
現在検討中の課題としてマウスの遺伝的背景が一定の影響を持つ可能性が考えられる。丹羽が報告した検討はC57BL/6系という遺伝的背景を持つマウスについてだったが、Natureの論文ではこのマウスと129系という遺伝的背景を持つマウスを交雑して得られたF1マウスについても検討を行っている。このF1マウスの準備が間もなく整うのでF1マウスを用いた検討を行う。
脾臓以外にも肝臓及び心臓での検討を行っている。ストレス処理の条件としてもNature記載の方法の他、バカンティープロトコールなどに記載されている方法について検討を行っている。これらの課題について来年3月までに一定の判断が得られるよう検討を進める計画には変更はない。

丹羽C57BL/6・脾臓細胞・塩酸処理という条件では、これまで22回やった。1回に使用するマウスは通常2〜3匹。この回数の中の一部は人工遺伝子を持たないC57BL/6系マウスの実験も含んでいる。人工遺伝子を持ったマウスの実験における蛍光観察の結果は今日話したものに代表される通り。

相澤:今、一定の判断を下すことができるのはC57BL/6由来の脾臓について弱塩酸処理をした場合の結果について。それも小保方ではなく丹羽のチームで行った結果である。それ以外の検討途中の課題がまだ沢山ある。今日報告したのは検討を進めている事項の一部に過ぎない。それらの検討中の課題と小保方の検証実験への参加を得て検証プロジェクトを引き続き進める予定。

相澤:今後はC57BL/6系・129系とそれらのF1の3系統で検証実験をしていく。脾臓以外の組織、肝臓と心臓、ストレス処理条件としていくつかの方法を現在試している。それらについて一定の判断が下さられるまで実験を行いたい。

丹羽:スケジュール予定とは違い、実際にはキメラ検証等には進められず、C57BL/6系の実験においては7月末まで継続して行っていた。Cre-LoxPの実験は継続して行っている。
全体133万円予算のうち、700万円くらいをこれまでに使った。

相澤:特許にあるATPによる処理もやっている。小保方さんがATPを使った処理をしていることは確認している。今日の段階ではATPについてはまだ検討中で、これにより得られた細胞塊が多分化能をもつか、特にキメラ形成能を持つかということは検討されていないので、まだ何も言えない。細胞塊が得られているかもまだ検討途中であり、その性質の確認ができていない段階ではコメントを差し控えておく。

相澤:キメラができたり、STAP幹細胞ができたりという様な細胞は今までのところ得られていない。(自家蛍光ではない)光る細胞は得られたケースもあるが、その多能性などの性質がまだ分かっていないので、それが意味のある細胞かどうか判断することができない状態である。
例えば、18番染色体にGFPが入ったマウスを渡してSTAP細胞を作らせたけれども、その細胞の18番染色体にはGFPが入っておらずその様なマウスは存在しなかったと報告されたが、よく調べると該当するマウスが存在していたというケースがあった。
途中段階で断片的に報告すると大きな混乱を生む可能性がある。我々としては最終的に一定の判断ができないものについては公表できないので了承して頂きたい。

坪井
:小保方さんによる再現実験を延期するという事は今のところ検討していない。本人からも延期の要請は出されていない。11月末までの結果を報告することになる。それ以外に中間報告をすることは検討されていない。検証計画は基本的には相澤先生の総括の下でやっている。

相澤:11月の最終報告に小保方さんが出席する事はこれまで念頭になかった。最終報告の場所に検証実験に関わった者を全員出席させるつもりはなく、実験の責任者が検証実験について答える事を考えていた。小保方は検証実験のメンバーに過ぎないので、彼女のやった事を含めて全体をどう考えるかは実験責任者と総括責任者の判断になる。私どもの判断を発表するので小保方を参加させるという事は考えていなかったが、ご指摘を受けたので改めて考えてみる。

相澤:現時点でSTAP細胞がどれくらいの確率で存在しそうかという事は、研究者としては、宝くじがどれくらいの確率で当たるのか想定する事はできないので、答えるのは不可能。検証した結果についてそれをもとに次にやる事を決めて、最終的にキメラ形成能があったりテラトーマを形成する多能性細胞を得られるかどうか、あるいは多能性を示す分子マーカーを発現する細胞がどれだけの頻度で得られたか、またはこれだけやってみたがそうした細胞は全く得られなかった、という様な事を検証して報告することが我々にできる事である。

相澤
:STAP現象とは何かは、実際上は幅広い概念であるが、一番ミニマムにはOct4の発現調節領域の下でGFPを繋げた時にそれが光ような細胞塊を得られた事をもってSTAP細胞という言葉を使う人もいるし、その細胞が最終的にキメラ形成能を持つと確証の得られたものについてSTAP細胞と言う使い方をされる事もある。例えば小保方さんが200回成功したというのはキメラ形成能まで持つようなSTAP細胞塊のことではなくOct-GFPが光ような細胞塊という意味で使っていると思う。
我々は検証という立場であるが、それぞれの段階のどこまでができたかと報告する形になる。

相澤:我々は検証プロジェクトとしての見解を報告する。小保方さんの弁護士がどう言うかは私の関知するところではない。小保方さんを参加させている意義は、発展段階の研究においてはその人がやらないとできないというという事がどうしてもサイエンスにはある。例えば、ES細胞でも最初は誰でも樹立できたわけではなく、ごく稀な人しか作れなかった。そういう事がサイエンスにはあり、最終的な決着はやはり小保方さんにつけて頂く事が大きな意味をもつ。

[片瀬意見]
得られた知見が一般的な技術として普遍化する前には、難しくて一部の人しかできないケースはあるが、第三者が誰一人として再現できなければ、そもそも科学の知見として普及できない。提唱者だけができるという状況では、客観的な確認が不足しており、こうした第三者による「再現性」の確認が疎かにされてきた事が、過去にも大きな研究不正事件を招いている。
一般論として、本人が何度も「○○が出来た」とデモンストレーションしても、こっそりトリックを使っているかもしれないので、本人による再現実験は最終的な証明にはならない。科学の手続きについて、改めて基本に立ち戻る必要があると思う。

(参考)
「ある」という証明の場合は、複数の第三者によって、再現性が確認されたら検証は終了。

「ない」という証明の場合は、あらゆる可能性の全てを検証しなければならず無限に近い労力が必要になる。現実的には、どこかで線引きをして検証を打ち切ることになる。
この線引きを(1)第三者を代表する人達の再現失敗にするか、(2)提唱者本人による再現失敗にするかは、ケース・バイ・ケース。
(提唱者本人による再現失敗を打ち切り基準にすると、もし本人が再現に成功した場合に、「ある」と判断するには改めて第三者による再現性の確認が必要になり、エンドレスになる恐れがある。その場合は「判断保留」の状態が続く)

相澤:小保方さんとは、何について検証するかという共通認識は持っている。

丹羽
:4月の検証実験発足の段階で、分化細胞から刺激により多能性を獲得することをもってSTAP現象であると定義している。多能性を獲得するという事は、例えばキメラ胚への寄与、あるいはテラトーマの形成、あるいは多能性幹細胞の樹立、そのいずれかを指している。7月に小保方さんが参加する際に5つの検証項目を挙げている。その中でマウス組織からのOct3/4-GFP陽性細胞の出現がなければ実験総括責任者の判断により中断するとしてある。Oct3/4-GFPが発現しただけではSTAP現象が確認できたとは判断されない。

相澤:この検証プロジェクトの中では保存細胞の調査は行わない。

坪井:検証は3月までということになっているが、途中段階で改革推進本部が相澤先生の報告を受けて継続するかしないかの判断することはあり得る。

相澤:小保方さんは、いろいろと困難な状況にあったが、今までやってきたのと同じ操作を一通り数回繰り返して準備できたので、早急に本格実験に入れる。
予備実験は第三者の立会人の下で行われたものではなく、あくまでも手慣らしであり、その結果がどうであったかはここで報告しない。
小保方さんは、積極的に早く本格的な検証実験を始めたいという意志を示している。

[片瀬質疑]
スライド資料P10の下に記載されている3つの実験結果(セルソーターを用いた解析結果、定量PCR法を用いた遺伝子解析結果、免疫染色法を用いた解析結果)について、代表的なもので良いので提示して頂く事はできるか?

丹羽:本日これらのデータに関して発表用の資料というのを用意していないので、今日直ぐにという事は不可能。

[片瀬質疑]
後で良いので、データを見せて頂いた方がどうであったか分かり易いと思う。

丹羽:それをどういう形で示したら良いのか、実は今日まで我々も悩んできたところで、例えばFACSのデータを皆さんに説明するといっても、なかなか簡単ではない。それを科学者向けのデータとして出せばいいのか、より分かり易い形で出した方がいいのかということが、悩ましいところである。

[片瀬質疑]
取り敢えず、科学者が分かる形でひとまず出して頂いて、それについてのかみ砕いた解説というのは後でも良いと思う。この問題に関心を寄せている科学者も多いので、そういう方々に納得し易い形で示して頂けると良いのではないか。

丹羽:はい。

[片瀬補足]
科学的な検証結果としていくつかの結論を出しているが、それぞれについての判断の根拠となった実験データを示す必要があると思う。この検証の記録を残す上でも、実験データを提示しておくことは大事だと考える。

[片瀬質疑]
今回の結果として、内在性のOct3/4の発現が遺伝子でもタンパク質でも検出できなかったが、マウスの系統を変えてこれらの結果がどれくらい変わる見込みがあるのか?

丹羽:その点に関して、我々は元々多能性幹細胞の1つであるES細胞の研究をずっと行ってきた。ES細胞においては、その樹立効率がその遺伝的背景の影響を極めて強く受ける事が分かっている。そういう経験からも、他の遺伝的背景を試す価値はあると考えている。
例えば、今回C57BL/6系統を用いたが、今後用いる予定の129系統はこれまでにも極めてES細胞ができ易い系統として知られている。それが影響する可能性はまだ否定できない。

[片瀬質疑]
別の系統を試しても同じ様にネガティブな結果しか得られなかった場合は、継続するかどうかを考慮されるという事になりますか?

丹羽:もちろん、その時点でその結果を基に考えて行きたい。

丹羽:22回の実験のうち、細胞塊が見えなかった回もある。C57BL/6・脾臓・塩酸処理の条件では、細胞塊が見えた回の方が少なかった。
元々血液細胞は互いに接着する性質がないので、細胞塊を形成するのは1つの大きな変化と考えている。おそらく遺伝子発現の変化を伴って接着性が変化したと推測するが、我々は直接そこを調べていないので自信はない。

丹羽:以前の会見で「目の前でSTAP細胞ができる様子を見たので、存在を検証したい」との主旨を述べたが、これは細胞塊ができて特異的な蛍光を発するという段階までを見た事を指している。厳密には、それでSTAP細胞ができたとは言えない部分であるが、その時は、その先が事実として検証されている事も合わせてそういう判断をしていた。
その観察をした時も、緑と赤の蛍光フィルターを変えてGFPの特異的蛍光を確認していた。

丹羽:細胞塊ができた事の直接の意義というのは何も言えない。多能性の指標が出て、かつ多能性が生物学的に検証されない限りは、細胞塊に意義を見出すことは難しい。これ以前に酸処理で細胞塊ができるという報告があったかどうかは、論文の精査をしていないので返答しかねる。

相澤:小保方さんの再現実験にはC57BL/6もF1も使う。

相澤GFPを入れたマウスは、純系の遺伝的背景で保存する事が作法としてある。すぐ手に入るのはC57BL/6系で、実験に用いるのは一定数のマウスを確保しなければならず、先にC57BL/6系を使用した。続いて129系と交配してF1を準備するという順番になった。

丹羽:今日報告した範囲では小保方さんからのアドバイスの影響なく行われた。いくつかのアドバイスは受けているので、現在そういう項目に関して検討中。
最終的に検証実験の内容は公表されると思う。

丹羽:小保方さにからアドバイスの内容については、我々が咀嚼できるに至っていないので判断しかねる。実験手技というのは、場合によっては職人の「こうするんだ」の一言の様に、ぽっと言われて、すぐできる部分とできない部分がある。

丹羽:このまま実験を続けた結果、得られるべき結果が得られなかった場合、STAP現象は存在しないという結論がでる可能性はある。そこをはっきりさせたいというのがこの検証実験の目的で、何が何でもSTAP現象を証明したいというスタンスではない。

相澤:小保方さんには本検証に入ってもらい、そこで得られた結果について報告する。

丹羽:キメラ形成能の検証やSTAP幹細胞の作製などは、今回報告した細胞塊においては行っていない。GFP特異的な蛍光が確認されず、内在性Oct3/4の発現も確認されなかったので、その先に進む価値がないと判断した。

丹羽:C57BL/6・脾臓・塩酸処理の条件では、STAP細胞はできていないと言える。C57BL/6・脾臓というのは、一番STAP細胞はでき難いという情報もあり、それ以外の条件を試す価値はある。論文ではできているが、そこが小保方さんの言うコツなどの話になるかもしれないし、幻影かもしれないが、それをはっきりとさせるのが我々の役割である。

相澤:検証ブロジェクトについては、小保方さんが参加するのは11月まで、この検証実験は3月までという期限が設けられている。それまでに検討したものについて、一定の判断を下せる様にして報告する。その時点でまだ分かっていない事があるからと、引き延ばして続けることはしない。

丹羽:論文発表の段階では、例えば若山さんご自身でSTAP細胞を作製したと聞いていたので、チーム内で小保方さんの他に再現実験をしていなかったという認識はなかった。
自分の責任として論文を撤回し、Protocol Exchangeも撤回をした。その内容に関して研究者として手を下して頂いた方々には、この場をお借りしてお詫びを申し上げたい。
検証という意味では、私はまだ責任を果たしきっていないと思う。来年3月までの範囲で、可能な限りのことを検証して皆様にお伝えしたい。

相澤:先に宝くじに喩えて話をしたのは上手くなかったと思う。宝くじの様にこれならば当たるとか当たらないなどと考えて我々はやっていないという意味であった。

丹羽STAP細胞胎盤形成に寄与することに関しては、免疫染色像は見ている。しかし、それが作製された時はこの研究に参画しておらず、キメラから切り出されたところから確認はしていない。今ようやく自分の手で実験しているので、有るか無いかこれから確かめられる。

丹羽GOFに関しては、論文記載も我々が使っているのもC57BL/6純系。
これから実験に使用する予定のマウスは、Oct3/4-GFPが入ったC57BL/6と129を交配したF1を使う。もう1つはCAG-GFPを持ったC57BL/6と129のF1。
CAG-GFPマウスは若山先生が用いたマウスとは別のものになる。CAG-GFPは世界中で複数系統が作られており、それぞれ全身で光るという性質は同じ。

丹羽STAP細胞は保存できないものだと認識している。一過性に多能性マーカーを発現し、かつ増殖能を持たないので、その状態の細胞を保存することはできないと聞いている。

相澤STAP細胞を凍結保存して使う検討はされていないと思う。

丹羽:塩酸の添加量が論文の通りだと弱酸性にならなかった件については、実験手技に依存するものとなる。細胞を一度遠心分離して集めて溶液を除去し、そこに500μlの緩衝液を加えて、さらに希釈塩酸を加える。この時に元あった溶液をどれだけ吸い取るかにもよるし、500μlを加えても最終容量が520μlになるのか530μlになるのかは、個人差が出てしまうものだと思う。そういう事も含めて、少なくとも我々がやった範囲ではこのグラフの様な傾向になった。溶液をどこまで厳しく吸い取るかも含めて、若干の個人差は出る。
誤差と考えても良いと思う。常にこういう生物系のプロトコールには、書かれている事とハンドリングの慣れのバランスによって上手くいくかどうか決まると認識している。
ある意味、現物合わせみたいな所があり、その人その人の、元のプロトコールがあったとして、その中のパラメーターのpHが重要なのか、何が重要かによって、その人に合う条件を確立すれば良い。その人がやれば確実に再現できるとして、その時に重要なパラメーターは、ピペットを用いた懸濁の強さなのかpHなのかという事をきちんと認識することが重要だと考える。

丹羽:予算に関して、既に129系との交雑の凍結胚まで完了しており、使用した700万円はそれを含めての金額。

丹羽:22回やったうち、GFPを入れたマウスを使ったのは半分以下。C57BL/6・脾臓・塩酸処理の条件でやる実験は、現段階でこれ以上の改善点を見いだせないので、一旦止める。
小保方さんにはこの条件でもできるか検討してもらう。仮に、そこからまた何らかのヒントが得られたら、それを反映させる形で再会することはあり得る。
定量PCRを用いた遺伝子発現で判断しようという時に、そこにある細胞全てを回収して検出するのか、浮いている細胞塊を1つ1つとって検出するかによって、検出感度が異なってくるし、細胞数が少ないと特別な手法が必要になる。
試行錯誤しながら、最終的にどういう判断基準で次の過程に進めばよいかを検討中。

丹羽:検証は積極的にやっている面と、義務でやっている面と両方ある。科学者としての興味もあるし、あるという事を前提として検証しているわけでもない。

相澤:この検証プロジェクトと、小保方さん若山さんのやられた研究にどういう不正または誤りがあったのか、どう処分されるべきなのか、CDBをどう改革すべきか、などの問題とは直接関わりはない。

[片瀬意見]
「小保方さん若山さんのやられた研究」とされているが、論文の共著者として別の人達もいる。共著者全員にそれぞれ論文に対する責任があると思う。

坪井:3月31日の調査委員会以降の疑義に関しての調査は、6月30日に発表した新たな予備調査が始まっており、間もなく本調査に移ると川合理事が申し上げた通り。次の調査委員会の委員長や委員については基本的に全て外部の有識者にお願いする事を、アクションプランのP8に書いている。
予備調査に2ヶ月かかっているのは、直接担当していないので分からないが、科学的な事実の認定作業をしていると聞いている。

丹羽:C57BL/6系は、肝臓・心臓に関しての検証が現在進行中。Cre-LoxPは、それぞれの遺伝的背景の制約がありC57BL/6系が準備できている状況。
全ての条件の組み合わせができるとは思っていない。それぞれの結果を見ながら、仮にポジティブなものが出ればその組み合わせに集約するだろうし、出なくても時間的な制約で全部はできないだろう。
少なくとも、どれかの組み合わせで可能性をある程度カバーできる様な計画にしていきたい。

相澤:小保方さんには、C57BL/6・脾臓・塩酸処理の条件でまずやってもらう。
今のところ、キメラ形成能を調べる段階に至ったものはない。

丹羽:4月から検証実験を始めたが、正直やってみないと分からなかった。手強いです。
論文が撤回された理由は基本的にデータ上の不備あるいは表示上の問題であり、撤回すべきだと判断した。論文が消滅したからには、STAP現象の科学的な根拠は失われている。
もう一方で、STAP現象があったかどうかに関してはまだ白黒ついていないので、それをはっきりさせるために現在検証を行っている。

丹羽:科学者は、白の目が出ても、黒の目が出ても、はっきりしていれば納得する。それ以上の感想というものはない。
もし期限を切らずにやるのであれば、この様な形の検証実験としてではなく、個人研究として行うべき。

相澤:本検証実験を個人の研究としてではなく、理研CDBとして行うことに疑義が提示されていることは重々承知しており、総括責任者として重く受け止めている。論文が撤回された以上、STAP現象はもう無いこと、検証する意味はないというというご意見、小保方がこの検証実験に参加する事に対しての疑義も承知している。
CDBはこの検証実験を来年の3月まで行う事とし、かつ小保方自身の参加を得て最終的には決着をつける道を選んだ。検証をこの様に行うことの可否は後の判断に委ねたい。
総括責任者としては、理研CDBで行われたSTAP研究が、どの様なものであったか、疑義を含めた問題の全容解明にも本検証実験は必須であると考えており、3月までに一定の目処を付けられると確信している。