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整体やカイロプラクティックによる頸椎への施術の危険性について

ニセ科学 医療 健康

 大阪で今年6月2日に、「免疫力を高める」等と宣伝される代替療法によって、首を強くひねるなどの施術を受けた生後4か月の赤ちゃんが施術の途中で呼吸が止まって意識不明になり救急搬送されましたが、低酸素脳症による多臓器不全で6月8日に死亡していたことが報じられました。実は昨年も、同じ代替療法師による施術を受けた幼児が死亡していることが判明しています。
(魚拓)読売新聞:施術後に乳児が死亡…「免疫力高める」首ひねり
http://megalodon.jp/2014-0907-0209-30/www.yomiuri.co.jp/osaka/news/20140906-OYO1T50004.html?from=tw
この新聞記事の解説図

 この代替療法師により施術を受けている様子を写真付きで紹介しているブログがいくつかあり、その様子を見ると無理に赤ちゃんの首を捻ることを1時間くらい続けており、赤ちゃんが苦しがって泣いていました。
 一歩間違うと頸椎を痛めるとても危険な施術です。

 こうした施術の危険性は、代替医療のトリック』(新潮社)[文庫本の題名は『代替医療解剖』]の第IV章「カイロプラクティックの真実」に詳しく解説されています。
この部分を引用して紹介します。

P226〜

 もっとも危険なのは、頸椎へのマニピュレーションが行われる場合だ。頸椎は、七つの椎骨が、首の付け根から頭蓋骨の後ろに向かって並んでいる。これは人体の中でもっとも曲がりやすい部分だが、その柔軟性には代償がある。この部分には、頭と体をつなぐすべての生命線が通っているため、きわめて無防備なのだ。とくに、頸椎の椎骨のそばには二つの椎骨動脈があり、それぞれの動脈は椎骨の両側で対になった穴を通っている。それを左図(ここでは下図)に示す。

 二本の動脈はそれぞれ、一番上の椎骨の構造に従って鋭くカーブしたのち、脳に達して酸素を供給する。ここで動脈がカーブすること自体は、まったく自然で何も問題はないのだが、首を引っ張りながら曲げるという動きが、極端に大きく、あるいは突然に引き起こされると問題が生じる。そしてそれこそがカイロプラクターの治療に特徴的な、高速小振幅スラストのマニュピレーションによって引き起こされる動きなのだ。力がかかった結果、いわゆる椎骨解離が起こる−つまり動脈内部の血管壁が剥がれる。椎骨解離は、四通りの方法で血流に影響を及ぼす。第一に、損傷を受けた部分に血の塊ができて、動脈の流れを徐々に妨げる。第二に、やがて血の塊がその部分からはがれて脳に運び込まれ、椎骨とは遠く離れた場所で動脈の血流を妨げる。第三に、動脈の内側の層と外側の層とのあいだに血液が溜まり、そこがふくらんで血流量が減少する。第四に、損傷が原因となって、動脈が痙攣を起こすことがある。つまり血管が収縮して、血液が流れにくくなるのだ。これら四つの場合のすべてにおいて、椎骨解離は最終的に脳の一部への血流量を減らす。そして脳卒中が起こる。最悪の場合には、脳卒中によって脳が回復不能な損傷を受けたり、死に至ったりすることがある。

(太字は私が強調のためにしました)

 次に、カイロプラクティックの頸椎への施術によって死亡者が出た例です。20歳の女性、ローリー・マサイアソンさんのケース。
 彼女は最後から二番目のカイロプラクティックの施術の後、首に痛みと肩こりの様な症状を感じ、翌日、再び施術を受けます。

P228〜

 カイロプラクターがまた彼女の首にマニュピレーションを施すと、ローリーは悲鳴を上げた。白目をむき、口から泡を吹き、身体が痙攣して、顔から血の気が失せた。マサイアソンはすぐに病院に担ぎ込まれたが、昏睡状態に陥り、三日後に死亡した。ローリーが異常な突然死を遂げたことから、死亡時の状況を明らかにして、以後同様の悲劇が起こるのを防ぐべく死因が調べられた。四日に及ぶ検証ののち、最後から二番目のカイロプラクティックの施術で、ローリーの頸椎動脈が傷ついたことがほぼ確実となった。その傷のせいで、脳に血液を運ぶ二本の動脈の一方に血栓が生じ、その晩、彼女が感じたような比較的穏やかな影響が出た。そして最後の治療によって、血の塊がその場からはがれてローリーの脳に運び込まれ、彼女を殺すことになったのだ。

 こうした死亡例は、これまでに多数報告されています。とても危険な施術なのです。
 紹介したのは成人のケースですが、まだ体の柔らかい赤ちゃんに対して無理に首を捻る施術をすると、さらに危険が増すと考えられます

 余談として、英国カイロプラクティック協会が、2008年8月に、この本の著者のサイモン・シン氏に対して名誉棄損の訴訟を起こします。しかし、2010年4月に英国カイロプラクティック協会は訴訟を取り下げ、事実上の完敗に終わりました。
・忘却からの帰還:サイモン・シンを訴えたことで自爆する英国カイロプラクティック協会
http://transact.seesaa.net/article/142792887.html
・忘却からの帰還:サイモン・シンの名誉棄損訴訟が終了
http://transact.seesaa.net/article/146663694.html
・『代替医療解剖』文庫版訳者あとがき by 青木薫
http://honz.jp/31578


代替医療のトリック

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代替医療解剖 (新潮文庫)

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