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予防接種で自閉症になるという恐怖の拡大に加担したマスコミ側の問題について

関連エントリー

・予防接種で自閉症になるってホント?
http://d.hatena.ne.jp/warbler/20110111/1294727614 

MMRワクチンと自閉症の捏造論文事件に関する歴史
http://d.hatena.ne.jp/warbler/20110114/1294953646

(まだこれらを読んでおられない方は、ぜひ先にお読み下さい)

前々回と前回のエントリーで、MMRワクチンが自閉症と関連性があるとして、予防接種拒否の動きが活発になり、はしかなどの疫病が世界規模で再び広がり始めたということについて取り上げました。
このパニックの元凶となった論文を出したAndrew Wakefield氏が英国のバイオベンチャーブームに悪乗りして金儲けに走っていったのではないかという指摘をしましたが、この予防接種への恐れは、マスコミが関与してさらに拡大していった経緯もあります。
マスコミも主な共犯者だと考えられます。

MMRワクチン恐怖を流布したマスコミの状況について調べてみると、ありました。とても良い記事ですので、紹介します。
2005年10月31日のThe Daily Mailに書かれたMMR自閉症に関連があるとした記事に対する、医師でありサイエンスライターとしても有名なBen Goldacre氏の反論記事です。かなり手厳しいですよ。

2005年10月31日のThe Daily Mailの記事はこちらです。
MMR: the unanswered questions (The Daily Mail, October 31,2005)
  MMR: 答えられていない質問
by Melanie Phillips
http://www.melaniephillips.com/articles/archives/001468.html

Ben Goldacreさんの反論記事はこちら。
・The MMR sceptic who just doesn't understand science (The Guardian, November 2, 2005)
  MMR懐疑派は科学を理解していないだけ
by Ben Goldacre
http://www.badscience.net/2005/11/comment-the-mmr-sceptic-who-just-doesnt-understand-science/

あなたがこれまで何と言われてきたとしても、科学の目的は確信ではない。そして、これは、一般の人々にデータを解釈し説明することを担当する医療従事者達に対して問題を引き起こす。我々は、多分知性があるが科学的根拠に基づいた医療について何も知らない人々に対して、一般向けのフォーラムにおいて非常に短い話で大規模な誤解に反論することを期待される。

Benさんも、一般の人達に説明するのに色々と苦労されている様ですね。

健康上の不安は、練り歯磨きの様だ:それらは簡単に絞り出されるが、チューブの中に戻すのは難しい。例えば月曜日に、the Daily MailのMelanie PhillipsはMMRワクチンに対する、さらにまた別の攻撃を書いた。彼女は、MMRはおそらく安全であり自閉症との関わりは無いとする新しいコクランレビューを信じたジャーナリスト達は、その報道発表を額面通りにとった怠惰な手先だと示唆した。

問題は、Phillipsは基本的な疫学を誤解しているらしいことである。彼女は かなり疑わしい分析方法の「研究データ」を引用し、そこにあるデータを不正確に伝えている。彼女の反応は、ジャーナリスト達が科学に参加する時に起こりうる問題の縮図である。

コクラン共同計画は独立した国際的な非営利組織で、批判的な評価を理解している科学者達による科学者達のために書かれた文献の系統的レビューを出している。健康問題について書いているジャーナリスト達も、科学的根拠に基づいた医療の複雑さに精通し、学術論文を読む訓練を受けていれば、もっと幸せな世の中になるだろう。しかし、彼らの大部分はそうできないので、報告はジャーナリスト達の為により易しく要約した報道発表に変換される。

要約すること自体がまた問題を生じさせる。科学は、(本来)そのデータの不確かさを図示しているエラーバーが全てに付いてくる。
私は、いつか全ての政治家の演説にエラーバーが横付けされて、彼らの主張の確からしさの限界に応じてそれが変動するのを見てみたいと思う。

私も、エラーバー付きの政治家の演説があったら、話の信憑性がどのくらいか把握できるし、とてもいいのになと思います。(笑)

科学は次の様に行われていく:あなたは1つの研究をして、いくつかの結果を得てそれらを略さずに書き上げる、そうすればどの人もあなたが何をしたのかを理解し、それを再現してみて批評することができる。

あなたは次の様に言う:私達の結果は以下の通りです、それらはこの統計的な確からしさ(エラーバー)です、そしてこの知見と別の研究所(室)から出されている他の多くの知見に基づいて、特定の仮説の上で次の様な結論に達しました。

その過程は透明であるが、彼ら自身の結論に至る為に、方法を分析検討し、統計を理解して、論文を批判的に評価することのできる人達を頼りにしている。
不完全な追跡調査や不完全な計測など、研究をする際の実施上の問題にまつわる異なる状況があり、それぞれ独自に全ての科学論文には多かれ少なかれ不備がある。
科学者達はすべてそれを知っている。

実際に科学研究を行って、得られたデータを統計処理してエラーバーが付いたグラフなんかを作成したりする経験などを積んでいくと、この感覚は身にしみて分かってきます。経験を積んだ多くの科学者にとっては、データの確からしさの範囲を考慮していくのは当たり前の感覚なのですけれども、そういう経験をした事の無い人達には、あまりピンと来ないかも知れません。例えば、データを取る際に計測の誤差などはどうしても必ずついて回る問題ですし、測定方法によっても誤差の範囲は大きく違ってきます。

コクラン・レビューは論文の系統的レビューであり、全くこれと同じ様にして遭遇したそれぞれの論文を批評する。そのようにして、この特定のコクラン・レビューについての報道は、総合的に、この証拠の概要はMMRがかなり安全であることを示していると述べている。

しかし、Phillipsはその詳細な報告書を読み、彼女が見出したと思った「[1998年にワクチンと自閉症の間に関連があると最初に主張したAndrew Wakefield]に対抗して用いられてきた最も有名な研究のうちの少なくとも9つについて、それらが構成された方法は信頼できないと述べている」という記述に激怒した。もちろん、そう書いてあった。コクラン・レビューは論文を批評することを意図しているのだ。

コクラン・レビューが目を向けた50万人にも上る人々についての数多くの大規模な疫学的調査を考慮した場合に、なぜWakefieldの思惑的な被験者12人の症例シリーズ報告がそれほど心配無いものなのかという理由を、その報告書が読者に付き添って一つずつ説明していないことで彼女は驚いたようである。

そんなこんなでPhillipsは、これまでに論文審査のある学術雑誌に発表されたことがなく、医学分野の学術論文を見つけ出す為の標準的な検索ツールであるPubMedの検索に載せられていない論文を、実験的な科学研究としている資料を提示した。彼女が引用した研究は、同性愛や妊娠中絶、ワクチンをめぐる論争でよく知られているある右翼の米国圧力団体の機関誌にだけ発表されたことのあるものだ。彼女は「自閉症腸炎(autistic enterocolitis)」は「世界中の研究で再現された」ことのある「疾患」で「新しい症候群」であると述べている。おおよその目安としては、「自閉症腸炎」というフレーズはPubMedの検索に載っている論文の中ではたった5つのみに出てきて、1つはWakefieldのもので、他の4つはその立場がほとんど疑わしいものである。

その上、彼女は基礎的な疫学を誤解しているようである。大規模な集団調査は、ある条件での小規模な増加を検出するのにより大きな力を持っている。明らかにPhillipsにとってはそうではなかった:「ごく少ない割合のみしか悪影響を受けていないと述べられ…」「しかし、集団規模の研究はあまりに(規模が)大きすぎてこの様な少数を拾い上げるには感度が低い」のだと彼女は言う。

それ(大規模な集団調査の有効性などの科学知識)は、生物医学研究を理解している者にとっては誰にでも自明のことである。もしあなたがそれを理解していない場合はたった2つの選択肢がある:
あなたが自力でデータを解釈してあなた自身の情報知識に基づいた結論に至る方法を学ぶか、信頼する人を決めることである。

The Daily Mailの記事は、科学オンチの記者さんによって、トンチンカンなデータの解釈による誤解と共に、怪しげな研究まで紹介してしまっていました。困ったものです。
こうして、Wakefield氏の捏造トンデモ説が擁護されて、その広がりを加速させていった様です。

<豆知識> コクラン共同計画
ここで、コクラン共同計画の話題が出ましたので、ついでに解説しておきます。
・The Cochrane Collaboration
http://www.cochrane.org/ 

コクラン共同計画のロゴには、色々な思いが込められています。このロゴの内部のグラフが何を表しているのか翻訳して紹介します。

ロゴの内部は プラセボ(偽薬・偽処置)とある健康管理法を比べた7つのランダム化対照試験系(RCTs)からのデータの系統的レビューを説明しています。

  • それぞれの横線は1つの試験の結果を表していて(線が短いほど、その結果はより確からしくなる)、ひし形はそれらをまとめた結果を表している。 
  • もしその試験で比較される2つの方法に同じ様な効果があるならば、縦線の位置のあたりに横線が集まり、もし横線が縦線と接触すれば、その試験は治療の間の差が明らかではないとみなされることを意味する。

(真ん中の縦線の位置は、比較する2つの方法の差が無い場合の位置になる)

  • ひし形の位置は、縦線の左側に向かえばその調べられた治療法が比較相手の治療法よりも有益であること示す。横線またはひし形が縦線より右側に向かうとその治療法は比較した治療法よりも害があることを示している。

このロゴの図は、早産しそうな女性に与えられた副腎皮質ステロイドの短期間で安価な治療単位のRCTsの系統的レビューの結果を示しています。これらのRCTsの最初のものは1972年に報告されました。図は、利用可能なRCTsが10年後に系統的にレビュー(見直し)され、未熟児合併症で死にかけている赤ちゃんのリスクを副腎皮質ステロイドが減らすことを強く示していることを明らかにしてきた証拠を要約したものとなっています。

1991年までに、あと7つの試験が報告されて、その事実はさらに強められました。
その治療は、これらの女性達の未熟児合併症で死んでいく赤ちゃんを30から50%減らしています。1989年までこれらの試験は報告されていなかったので、系統的レビューが無く、ほとんどの産科医はその治療がそんなに効果的だとは認識していませんでした。
その結果、何万人もの未熟児がおそらく不必要に苦しんで亡くなってきたと思われます(そして副腎皮質ステロイドよりも高価な治療を要していました)。 
これは、健康管理のRCTsの最新のレビューを系統的に実施することを怠った結果による人的損失に関する数多くの例の中のほんの一例です。

疫学の大切さを示すエピソードですね。

Ben Goldacreさんは、MMRの恐怖のデマによるパニックについて、興味深い記事を色々と書かれています。中でも、ご自身の「Bad Science」という本(2008年10月6日発行 http://www.amazon.co.uk/Bad-Science-Ben-Goldacre/dp/0007240198/?tag=bs0b-21 )からMMR問題の報道のされ方に関して指摘している部分を抜き出して、ご好意により無料で公開して下さっています。せっかくですので、こちらも翻訳してみましたので、紹介させて頂きます。とても考えさせられる内容です。

私が持っている「Bad Science」( 2009年4月2日発行 http://www.amazon.co.uk/Bad-Science-Ben-Goldacre/dp/000728487X/?tag=bs0b-21 )では、これよりもずっと色々な資料も加わって内容が大幅に書き加えられています。こちらの方の本の日本語版の出版準備が出来ているという情報があり、近々日本語版が発売されると思いますので、もし出たらぜひ読んでみて下さい。ホメオパシーなどのニセ科学についても詳しく色々と書かれているし、統計についての話なども詳しく解説してあります。とてもお薦めの本です。

[追記]
「Bad Science」の邦訳本が出版されました。
邦題は「デタラメ健康科学---代替療法・製薬産業・メディアのウソ」(ベン ゴールドエイカー著, 梶山 あゆみ 翻訳) 河出書房新社

・The media’s MMR hoax
 マスコミのMMRデマ
http://www.badscience.net/2008/08/the-medias-mmr-hoax/

※ブログ主注:この記事が書かれたのは2008年で、問題となったthe Lancet論文の著者である、Wakefield氏、 Walker-Smith氏らに対する医学総会議の審問は開始されていましたが、まだ捏造の詳細などについても明らかになっていない時期に書かれたものです。なので、彼らの捏造の内容や医師免許剥奪などの件には触れられていません。

これは私の新しい本「Bad Science」から抜き出したものです。私のお勧めとしてはこれを買って、あなたに同意しない誰かにプレゼントすることです。

Ben Goldacre
The Guardian
Saturday August 30 2008

Andrew Wakefield博士は「うそが暴かれた」と評されている彼の自閉症と腸に障害のある12人の子どもの−しかしながらそうだと見なす結論を決して立証していない−論文についての重大な職務上の不正行為の罪で医学総会議の前にいる。そして法律扶助から支払われた£435,643が彼の研究が損なわれていると証明しているとジャーナリスト達は確信している。   
私はここで異端者であるAndrew Wakefield博士を弁護してみよう。

マスコミは誤った人を指さしている。そして彼らは本当はMMRでだれが責められるべきかを知っている。ジャーナリスト達と編集者達は今日まで彼らによる類を見ないでっち上げを構築してきた。そしてついに、彼らが公衆衛生に深刻なリスクをもたらすことができることを実証した。しかし、次のことから学ぶべき多くの予想されなかったねじれもまた存在する:医療ジャーナリスト達自身の落ち度では無かったが、報道の中の偏りの規模がその当時誰もが自覚したよりもずっと大きく、Leo BlairがWakefieldよりも大きな役割をして、そのすべて(の悪影響)は思ったよりもずっと後で起きた。

まず始める前に、世界中にはびこるワクチン恐怖についてちょっと見てみる価値はある。なぜなら、私はこれらのパニックが如何に制限されているかにいつも驚くからだ。MMR自閉症の恐怖は、例えば、実質的には英国の外には存在しない。しかし、1990年代を通してフランスではB型肝炎ワクチンが複数の硬化症を引き起こしたという恐怖に囚われていた。

米国では、主なワクチン恐怖はチオメサールと呼ばれる保存料の使用をめぐってのもので、同じ保存料が英国でも使用されているのだが、こちらではこれついての問題指摘は見聞きされていない。1970年代では、英国において百日咳ワクチンが神経障害を引き起こすというまたもや1人の医師によって突き動かされて広がった懸念があった。

この時点では、まだ英国の他には直接MMR自閉症を関連付けた説は米国などでも中心に据えられてはいなかった様ですね。別の国では、それぞれが異なる理由で予防接種の恐怖が説かれていたみたいです。

純粋なリスクデータの評価よりも、それらが地方の政治的で社会的な懸念を反映しているということが、これらの反ワクチンパニックの多様性の説明を助けている。なぜなら、もしB型肝炎に対するワクチンやMMRが1つの国で危険ならば、どこでだって等しく危険であるべきだし、もしそれらの懸念が純粋に証拠に基づいたものであるならば、情報が素早く伝播する時代では特に、その懸念はあちこちのジャーナリスト達によって発信されると期待できるだろう。それらはちがっている。

1988年にWakefieldはthe Lancetに論文を発表した。それは驚くことに、原本の切り抜きを見直すと、その研究と記者会見は実際には公正に定量されたやり方で扱われており、そして(取材に来た報道関係者も)ほんのまばらなものであった。The Guardianとthe Independentは、第1面でその話を報道したが、the Sunは全く無視しており、the Daily Mailは−健康恐怖の本拠地であり、今やワクチン接種に対する激しいキャンペーンで知られている−新聞の中ほどに彼らの最初のMMR記事が遠慮がちに埋まっていた。その年間を通じて、全ての出版物の中に、たった122の記事だけがその話題について言及していた。

最初の記者会見は、思ったよりも地味だったのですね。

これは不合理なことではない。この研究そのものは、基本的には12人の臨床的な逸話を集めたかなりささやかな12人の「症例シリーズ報告」であり、その様な研究はただ単に興味深くて、それがまれな結果の原因となる可能性がひょっとしてあるかもしれない場合の参考に過ぎない。もし、宇宙に行った人達がみんなもう1つ余分に指をくっつけて戻ってきたら、そりゃ、注目する価値があるだろう。(ブログ主注:宇宙人は6本指だという説があるらしい) MMR自閉症というありふれたものと、12人を見い出した事は、どちらも全くぱっとしない。

もしそのまま、Wakefield氏らがどう頑張ってもあまり世間の注目を引くこともなく、不発に終わっていたら、予防接種と発達障害が強固に結びついて世界中にその恐怖が広まることも無かったでしょうに…。

しかし、いくつかのとても興味深い理由により、物事はずっと悪い方へ行ってしまった。2001年と2002年にその恐怖は勢いを増し始めた。Wakefieldがある無名の雑誌に総説を発表して、何も新しい証拠も無いのに予防接種の安全性に疑問を投げかけたのだ。彼は、腸障害と自閉症のある子ども達からの組織試料に麻疹(はしか)ウイルスが存在することを示したと主張する、PCR(遺伝子指紋法に使われる技術)を用いた実験室での研究についての2つの論文を発表した。これらは、全面的にマスコミ報道に受け入れられた。

[参考] 麻疹(はしか)の患者数の年度別グラフ(英国)
・Rise in measles 'very worrying'-BBC NEWS (2009年2月6日)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/7872541.stm

このグラフによると、2002年から麻疹(はしか)の患者数が増加していったのが分かります。
Wakefield氏が元凶の捏造論文を発表したのは、1998年でしたが、彼が2001年と2002年にこれに関する総説を出したことで話題に火がついた様です。

その報道は、今日では親しみを感じるありきたりなやり方で急速に劣化しはじめた。ひどく苦しんでいる親達からの感情的な逸話がマスコミの訓練を受けていないコールテン地の服を着た老人達に立ち向かった。英国家庭医学会の報道担当は証拠に基づいて明瞭に話すのに失敗しただけではなく、引用を求めて電話してきたジャーナリスト達に反MMRの一般開業医達を見つけ出してやることまでしてしまった。新聞と有名人達は政府と公共医療サービスを攻撃するための絶好のチャンスとしてワクチンを利用し始めたが、もちろんそれはカリスマ的で異端的な、体制に立ち向かって戦うガリレオの様な人物の完全な物語であった。そこには恐ろしい個人的な悲劇のリスクの要素があり、そしてもちろん自閉症は誰のせいか?という責任の問いかけがあった。

しかし、最大の公衆衛生の被害者は−これは全ての人の失態である−Leoと呼ばれる愛らしい赤ちゃんであった。2001年12月、Blair家は彼らの幼い息子がMMRワクチンを受けているかどうか聞かれたが、この質問は彼らの幼い息子のプライバシーの権利を侵害するものだとして答えるのを拒否した。この姿勢は全くの理不尽ではないが、その妥当性はCherie Blairが彼女の自伝を出版する過程でLeo君のワクチン歴を明らかにすることを選んだ時に、彼女によっていくぶんか蝕まれた。その自伝では彼を妊娠した際の性交の特別な行為についても述べちゃっているしね。

そして、他の多くの政治家達は彼らの子ども達がワクチンを受けていることを明らかにして喜んだ一方、Blair家が彼らの子ども達に予防接種を受けさせていない家族であるとどれだけの人達が信じていたかを知る事ができただろう:基本的に、彼らは健康に関する風変わりな人達に自らとり囲まれていた。そこにはCherie Blairの親友で側近でもあるCarole Caplinがいて、彼女はニューエイジのグル(教祖的存在)で「生活指導者」だった。CherieはCaroleの母親であるSylvia Caplinを訪ねたと報告されているが、彼女はスピリチュアルなグルであり徹底した反MMRであった(「小さい子にMMRをするなんて、とんでもない。それが自閉症を起こしたのは間違いなのだから」とthe Mailに話していた)。彼らはJack Templeと呼ばれるニューエイジの治療師とも深い関係があり、彼はクリスタル・ダウジングホメオパシー新石器時代ストーンサークル治療、彼がワクチンを不要にすると考えているいくつかの特別な母乳育児法などを郊外にある彼の裏庭で提供していた。

Blair家の交友関係についてあなたがどう信じようと、これが、彼らが彼らの子にMMRワクチンを受けさせたかどうかについて彼らが明らかにするのを拒否したことについて、英国民が考えていたことである。

まあ、なんとズラズラと。これって、怪しすぎます。そして出ました、ホメオパシー。(^^;)
日本の元首相夫人なんかも、スピリチュアル系に親和性があった様ですので、よその国の元首相のことはとやかく言えませんけどね。

MMRの恐怖はメディア分析の小さな家内産業を作ってきた。2003年には経済社会学研究会議が、科学に対する国民の理解におけるマスコミの役割についての論文を発表した。この論文のデータは、その恐怖のピークであった2002年1月から9月までの全ての主要な科学媒体の話をサンプリングしている。 MMRについてその時期に書かれていた話の32%にLeo Blairへの言及が見られ、Wakefieldについて言及されているのはたったの25%であった。Leo BlairはWakefieldよりもこの話の中で重要な人物であった。
 
そしてこれは10年続いた長い話の中で過ぎ去ったちょっとした瞬間ではなかった。かなり長期であったそのマスコミ報道のなかで実際に2002年はそのピークであった。1998年はMMRについてはたった122件の記事しか無かったが、2002年では1,257件あった(Tammy Boyce 著 Health, Risk and News: The MMR Vaccine and the Media (Media and Culture)より)。MMRはその年の最大の科学の話題で、意見欄や社説にそれについて書かれた可能性が最も高い科学の話題であり、これまでに報道機関に手紙を書かせた可能性が最も高い話題でもあって、人々は明らかにこの問題に取り組んでいた。MMRは長期にわたって最大のそして激しく報道された科学の話題であった。

それはきわめて悪く報道されてもいたし、そしてそのほとんどが素人によるものであった。2002年における高級紙の記事の1/3未満がMMRは安全だとする確かな証拠に言及しており、それが使用されている90の他の国で安全だと評価されていると述べているのはたった11%だけであった。

一方でGM食品やクローン作成の話題は、MMRの話題ではその知識が意図的に脇に追いやられていた専門的な科学記者によって書かれる可能性が高かった。MMRの報道の80%が特定の分野の無い一般記者達によるものであった。 少しだけ例をあげると、急に我々は、Nigella Lawson、Libby Purves、Suzanne Moore、そしてCarol Vordermanから免疫学と伝染病学の複雑な問題についてコメントとアドバイスを求められた。反MMR圧力団体は、その一方で、一般記者達を対象にすることで名声を得て、彼らに物語を供給し、そして健康や科学分野担当の記者達を積極的に避けていた。

ジャーナリスト達は、広報担当者、政治家、広報重役、販売員、ロビイスト、有名人、そしてゴシップ屋たちからの状況説明に批判的な耳で聞くことに慣れていて、彼らは一般的に健全で自然な懐疑的な態度を示すが、科学の場合になると一般記者達は科学的な証拠のの是非に関して批判的に評価するスキルを持たない。せいぜい、これらの「専門家」の証拠について、おそらく彼らがどういう人達なのかとか、誰の為にそれに取り組んだかということに関して調べられるだけだろう。MMRの場合、そのため研究者達は巧妙な中傷活動をたやすく受けやすい。

物語の実際の科学的内容は軽く扱われ、論争の両方の側の権威のある人達からの説教くさい意見にとって替わられてしまい、科学的なアドバイスはどうも恣意的で、経験的証拠よりも「専門家」という社会的な役割に基づいているという感覚が広まる一因となってしまった。

マスコミが科学的な根拠を歪めて、MMRは危険だと示す根拠を選んで報道し、そしてそれとは反対の根拠を繰り返し無視してきたので、公衆のどのメンバーもMMR自閉症を引き起こすと信じるとても良い理由を持っていただろう。PCRデータの場合、ワクチン株の麻疹ウイルスが自閉症で腸の障害のある子ども達の組織試料から見つけられたかどうかを判定する遺伝子指紋法の情報は、(これはバイアスであったのだが)数ヶ月前まではまさに疑問の余地のないものであった。あなたは早い時期から覚えているでしょう、「Kawashima論文」と「O’Leary論文」として知られているWakefieldの共著者の2つの科学論文がその様な証拠を見つけたと主張していて、それらが全面的にマスコミ報道に受け入れられたことを。しかし、あなたはそれらの論文が示していたのは多分偽陽性であったとは、まだ一度も聞いた事がないかも知れない。

2006年3月のthe Journal of Medical Virologyに、MMR後に退行性自閉症となったという子ども達の体内にある麻疹RNAを探しているAfzalらの論文が掲載されているが、とても強力な道具を用いており、一桁台のコピー数に至るまで麻疹RNAを検出できるものであった。その論文はワクチン株の麻疹RNAMMRと関係があると見なす証拠はないことを見出した。誰もこの研究について、英国のマスコミ(私のコラムを除いて)では何処にも書かなかった。

これは、極端な例ではない。もう1つの主要な論文が一流の学術誌であるPediatricsにその数ヶ月後に発表されたが、その初期の実験にかなり近づけて再現し、いくつかの点でより注意深く偽陽性が起きたかもしれない可能性のあるルートを探し出した。D’Souzaらによって書かれたこの論文に対して、その前のAfzalの論文の様に、マスコミは一致団結して静かにしていた。それは、私のカウントによれば、たった2つの場所だけで報道された:私のコラムとReuters newsの報告書である。その他のどこにも無かった。
[不正確を排除する為に追記] (しかし、その研究主任のボーイフレンドが、ガールフレンド(その研究主任)をどんなに自慢しているかについて述べているブログに書かれていた)

誰かがBenさんに、そのブログを教えてあげたのでしょうねw

[追記]
「危険だ、害がある」とする情報は人々の注目を引きやすくて、あちこちの報道機関で取り上げられやすいのに、「安全だ、無害だ」とするカウンター情報はどうも無視されがちの様です。こうして、情報のバイアスが強められていくのかなと思います。人でも動物でも、身を守る為に危険を知らせる情報(動物では鳴き声などによる危険信号)に、より強く敏感に反応するのは、生存を有利にする方向に働いてきたのかも知れません。でも予防接種の様に集団が生存するのに有利に働くものまで、あやふやな根拠に基づいて「危険だ」として感情的になって排除しようとするのは問題です。科学的な情報判断は人類が積み上げてきた英知です。もっと、科学的な根拠に基づいた意見をマスコミも重視して欲しいものです。

(参考)予防接種の軽微な副作用を大げさに報道したケース・日本
感染症診療の原則−HPVワクチン(俗称「子宮頸がんワクチン」)失神「多発」ニュース
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/118d039caa22a62908ec6f83b5dad826

Benさんの著書に戻ります。

ジャーナリストは「さらなる研究」を要求するのが好きである:それはここにあったのに、無視された。マスコミは、これらの話がつまらなくて、それを報道するのを怠ったのだろうか? 明らかに違う。なぜなら、2006年に彼らがこれらの話に言及することさえも何の異論もなく拒否し続けていたのと同時に、同一の実験手法を用いた同一の主張を報道し続けていた:the Telegraphは「米国の科学者達は自閉症MMRと関係していることを支持している」と述べた。the Mailは「科学者達はMMR自閉症と関連付けられるのを怖れている」と、かん高くわめいた。

この恐ろしい新データとは何だったのだろうか?これらの怖い話は、学術誌にはその後現れることは無い研究を公表することで実績のある男による、まだ開催されていない会議に向けた、まだ完成していない研究でのポスター発表に基づいていた。この時、Arthur Krigsman博士は、彼が自閉症と腸の障害のある子ども達からのいくつかの内臓試料にワクチン株の麻疹ウイルスからの遺伝物質を見出したと主張していた。もし本当ならば、これはWakefieldの理論を支えることになるが、この理論は2006年までにはぼろぼろになって横たわっていた。 私達は、Wakefieldと Krigsmanはお互いに米国にある私立の自閉症クリニックであるThoughtful Houseで医者をしていたことについても言及してもよいと思う。

これらの主張がなされた2年後になっても、その研究は発表されないままになっている。

言ったもん勝ちで、報道陣に宣伝しちゃったのでしょうね。こういった、口先ばかりでちゃんとした論文を書かない科学研究者なんて、同業者からは冷たい目で見られるものなのですが、その時の話題に乗った研究結果の発表をすると言えば、その信憑性も吟味せずにジャーナリスト達がホイホイと記事にして宣伝してしまうというのは、やっぱり困ったものです。

Krigsmanが彼の研究で何を行ったか、彼が何を測定したのか、またはそれを再現したのかについては誰も読むことができない。誰かこれに驚いたはずじゃないの?いいや。
Krigsmanは、2002年に大腸内視鏡検査を自閉症のある子ども達に行う調査研究を実施し、MMRからの害の証拠を見出したと主張して、あらゆるマスコミを歓喜させたが、この仕事も同様に全く未発表のままになっている。私達は、彼が何をしたのか正確に知ることが出来るまでは、彼の方法の中に不備があり得るかどうかを確認することはできない。大なり小なり何らかの不備は全ての科学研究に存在するのだけれども。彼は対象を適切に選ばなかったかもしれないし、間違ったものを測定したかもしれない。彼がそれを正式に(論文として)書き上げなければ、私達は知ることができない。論文を書くことと、彼らの知見がしっかりとしたものかどうかそれらを分析して確かめることは、科学者達が行うことだからだ。

この様に臆面もなく先入観にとらわれた報道を通して、英国のジャーナリスト達は大変良く彼らの仕事を行った。人々は、新聞で読んだ事に基づいて健康についての議論をし、そしてMMRの接種率は92%から73%へと急落した:健康に関する報道の劣悪な状況が、今では深刻な公衆衛生問題となっていることは疑う余地はない。私達は既に、2005年におたふく風邪の発生を確認し、麻疹(はしか)の患者数はこの10年間で最高のレベルになっている。しかし、これらは彼らの作り話による最も身も凍るような結果ではない。マスコミは彼ら自身の罪であるのに、Wakefield という1人の男を責めるために肩を並べているからだ。

ある1人の男が10年に及ぶ恐怖の話を作り上げることができたと想像するのは狂気の沙汰だ。学者達の主張がどんなに証拠に乏しいとしても彼らの考えを話さないように監視されるべきであるとほのめかすのは一時的であっても危険である。(そんなことをしたって)Wakefieldの様な人達は、自由に良からぬ考えをいだくにちがいない。マスコミはMMRのデマを作り上げ、10年間こつこつとそれを維持した。彼らの事実を認識することへの怠慢は、彼らが何も学ばなかったということを明確に示している。そしてそれができる様になるまでは、ジャーナリスト達と編集者達は繰り返し全く同じ罪をやらかし続け、ますます深刻な結末となるだろう。

確かに、Wakefield氏は元凶を作って悪乗りしたけれども、彼を持ち上げてMMRの恐怖を煽って広めていったのはマスコミの仕業です。これは英国での事例ですが、日本でも同様な事があるのではないかと思います。ジャーナリスト達の科学オンチは、日本でも頻繁に見られます。科学分野に秀でたジャーナリスト達の養成は、これから先もっと必要になってくるのではないかと思います。

(参考)朝日新聞社WEBRONZAに昨年(といっても、つい先月ですが)12月13日に掲載された「『牛にもホメオパシー』〜本場スイスのホメオパシー療法の現在」(岩澤里美)という記事は、ホメオパシーにさも効果があるかの様に宣伝する内容のもので、これを掲載したWEBRONZAの編集側の科学センスが問われました。

菊池誠さんによる「ニコ生シノドス」第1回への補足
http://astand.asahi.com/magazine/wrscience/special/2010123000006.html

朝日新聞WEBRONZAの記事で紹介されたホメオパシーADHDが顕著に改善したとする二重盲検の話は本当か? 
http://d.hatena.ne.jp/Mochimasa/20101226/p1

・牛にホメオパシーが効くってホント?
http://d.hatena.ne.jp/warbler/20110105/1294199038

[追記](2011.2.8)
WEBRONZAの「『牛にもホメオパシー』〜本場スイスのホメオパシー療法の現在」という記事は、他にも多数の人達からその内容に関する問題の指摘を受けていながら、あれから2ヶ月近く経ってもそのままWEBに掲載し続けられています発達障害ADHDで検索してその記事を見つけ、ホメオパシーに効果があるのかと期待しそれによる治療を試そうとしてお金と時間を無駄にする親達が出てもおかしくありません。どの様な対処をして頂けるか様子を伺っていましたが、一向にその動きが見えません。このまま放置されると良くないと思いますので、早急に対処して頂きたいですし、良識のあるマスコミとしての対応をお願いしたいと思います。

[追記](20011.2.10)
先日、WEBRONZAから次の解答がありました。
(a)記事内容は大筋で論評の範囲内と考える
(b)記事内容については媒体内で検証し、現状のように各人がウェブ上で可能
(c)活字媒体のような欄外表記やリンクも含めて検討したが、システム上の都合などで困難、というものです。

また、『メディアは一定の範囲内であれば「異論を述べる自由」を守る必要もあります。』として、訂正等には応じないとのことで、現状のままで掲載を継続するとのことです。
ですが、危惧されいるのは、発達障害ADHDで検索してその記事を見つけホメオパシーに効果があるのかと期待してしまい、それによる治療を試そうとしてお金と時間を無駄にする親達が出てもおかしくない」という事で、記事に直接注釈を入れるかその記事に対する批判意見を直接その記事にリンクしない限り、この懸念への解決にはなりません。また、「異論を述べる自由」について主張されてもいますが、その「異論」を信じて健康被害や金銭被害を受ける人達が出る可能性については、どう配慮するつもりなのでしょう?自分達は情報を流しただけで、その内容の判断については後は自己責任でやって欲しいということでしょうか?
これに対するWEBRONZA側の意見は、「元記事がホメオパシー擁護のために流用されるのは不本意ですので、そうしたケースを見つけたら是非ご教示ください。その時点で可能な対応策を検討します」とのことですが、そうなってからでは遅いと苦言を呈しているのです。また、そうしたものを全て把握するのは困難です。後手後手の対策でなんとかなると思っているとすれば、これはかなり無責任と感じます。そんな事は起きないと高をくくっているのでしょうか。甘いですね〜

これに関して、kumicitさんのブログで、誤った内容の記事を掲載してしまった事に対して、異なる対応をしたメディアの信頼性の違いについて述べられています。前例として参考になると思います。
・「忘却からの帰還」ワクチンと自閉症をめぐるSalonとRolling Stone
http://transact.seesaa.net/article/185005582.html

また、PseuDoctorさんのブログでも今回のWEBRONZAの対応のマズさについて意見が述べられています。
・「PseuDoctorの科学とニセ科学、それと趣味」Web論座ホメオパシーについて事実誤認の記事を載せっ放しで対応しない件(2011/2/9現在)
http://pseudoctor-science-and-hobby.blogspot.com/2011/02/web201129.html

どちらも秀逸な内容ですので、ぜひお読み下さい。

[追記](20011.2.27)

WEBRONZAが昨日問題となっている記事の下の方に、「WEBRONZAの主な関連記事」としてホメオパシーを批判する内容を含む記事がいくつかリンクされました。
対応をして頂けた事を評価したいと思います。ですが、欲を言えばもうちょっと記事を読んだ人の目に入り易い位置にリンクを貼っていただいたら、もっと良かったのではないかと思います。(^^;)