EMによる水質改善効果徹底検証(4)-三宅川編

愛知県稲沢市は平成14年度から開始したEM菌を使用した河川浄化活動の廃止を決定して、平成29年度でEM菌を定期的に三宅川に投入していた活動を止めました。

廃止の理由は、公共下水道と浄化槽の普及が主な理由となっていますが、実際にEM菌の投入効果がどの程度あったのかを検証しました。

EM菌は、毎年100tが稲沢町北山一丁目稲沢町小沢二丁目の2か所から投入されていた他に、三宅川流域の各家庭から生活排水と一緒に7t前後が投入されていました。

(投入量のデータは、河川浄化推進事業の外部評価説明補足資料から得ました)

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稲沢市に情報開示請求をして、稲沢市の各河川の平成10年度以降の水質データと、下水道と浄化槽の普及状況についての資料を開示して頂きました。

 

EM菌投入地点(黄)三宅川の測定地点(赤)、および今回比較用として選んだ近い位置にある別の川の測定地点(青)の位置を印した図を示します。三宅川の流路を水色で示しました。

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この位置関係が分かる通り、EM菌投入地点は三宅川の上流に位置します。

 

※水質の指標となるBOD(生物化学的酸素要求量を年度別に比較した結果を示します。BODは季節変動をするので、各年度の平均値を用いました。

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三宅川の2つ地点の測定データは、EM菌投入前の平成10~13年度の色を薄くEM菌投入後の平成14~28年度の色を濃くして比較し易いようにしました。

 

※EM菌の投入地点に近い「魦の橋」の方が下流の「白山橋」のBODよりも高くなっていますが、この理由として「白山橋」周辺の汚水処理設備が既に整えられていたことから、周囲から流入してくる水がきれいなためと考えられます。

 

平成14年度の「汚水適正処理構想エリアマップ図」:黒枠された地域は既整備区域

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三宅川にEM菌投入が開始された平成14年度は、上流の「魦の橋」周辺はまだ下水処理施設が未整備でした。同様に未整備の「増田橋」もBODが高めになっています。

一方、周辺が整備済みである「白山橋」「御神明橋」はBODが低めです。

 

・平成28年度の「汚水適正処理構想エリアマップ図」:灰色部分は整備済区域

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平成28年度には、「魦の橋」周辺もまだ未整備区域があるものの、下水道処理設備の普及が少しずつ進み、整備が済んだ部分が広まっています。

 

ここで、再度「魦の橋」地点の水質データ(BOD)の推移を見てみましょう。

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・EM菌投入を開始した影響

EM菌投入前後(投入前:薄い青投入後:濃い青)を比較すると、データのバラつきの範囲内である可能性がありますが、平成14年度から平成19年度にかけて、BODのベースラインが以前よりも高くなっているようにも読み取れます。もしかすると、EM菌の投入により有機物量が増えたことが影響したかもしれません。

少なくとも、EM菌の投入によって水質が改善されたとは言い難い結果です。

 

・下水処理設備が普及してきた影響

これもデータのバラつきの範囲内である可能性がありますが、平成20年度頃からBODのベースラインが下がってきたように読み取れます。これは、先に示しましたが下水処理設備が少しずつ普及してきた効果であると考えられます。

 

※以上の結果から、三宅川においても「EM菌の投入による水質改善効果」は確認できませんでした

 

BODの推移の様子からは、むしろEM菌の投入は水質を悪化させていた可能性もあります。(EM菌を投入しない方がもっと早く水質が改善されていたかもしれません)

 

 

(補足資料)

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