岡山県によるEM菌の水質改善効果の検証結果の紹介

岡山県は、平成6~7年度にかけて、EM菌が河川や湖沼の水質改善に使えるかどうかを検証しています。この検証結果は、「岡山県環境保健センタ一年報」第19号と第20号で報告されていますので、改めて紹介します。

 

岡山県環境保健センタ一年報 第19号】収録

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結果:

児島湖および流入河川の4地点において、1994年9月5日(夏期)、11月7日(秋期)、 1995年1月9日(冬期)、 3月6日(春期)に採水を行い、フラスコ培養によるEM菌の効果を検討したが、いずれの系においても対照系(非添加系)と比ぺて著しい水質改善は認められなかった

 

岡山県環境保健センタ一年報 第20号】収録

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結果:

・本調査研究は、汚濁湖沼水浄化に及ぼすEM菌の効果に関して、室内実験から野外実験まで多岐に亘って検討を試みたものであるが、いずれの実験においても(EM菌の開発者である比嘉照夫氏らによって)既に報告されているEM菌の著しい有効性を明確にすることはできなかった

・水園生態系の物質循環において重要な役割を担う底泥を含めた系全体としては窒素およびリンの効率的な除去は期待できない結果となった。

・EM菌が基質の希薄な環境または栄養塩類や基質の外部流入が少ない環境においても有効であるならば,フラスコ培養や水槽培養のような物質循環が制限されるパッチ培簑系でも明確な効果が得られたはずである。しかし.実際にはバッチ培疫系ではEM菌添加による明確な水質改善効果は得られなかった

・物質循環が成立し、様々な生物間相互作用が存在する自然生態系である小規模および中規模の汚濁の進行した池沼においても、 EM菌投与による著しい水質改善効果は認められなかった

 

考察:

・汚濁湖沼の浄化を図る上では、EM菌や徴生物製剤を闇雲に投入するのではなく、微生物間相互作用をはじめとする各種要因を調査・検討し、特に物質循環を考慮した効果的な投入法を検討する必要がある。

・環境改善を前捉とした環境保全の立場からは、 「微生物相改善製剤」の「微生物のバランスからの評価」が最重要事項となる。

EM菌を汚濁水域に投入するということは、すなわち、外来生物による既存の生態系への侵略という、生態学の分野では古くから論じられてきた問題にほかならない。

・有用微生物群とはいえ、気候も風土も異なり、土壌には当然異なる微生物相が形
成されている沖縄県の土壌から分離したEM菌をそのまま大最培養(複製)して岡山県の士壊に導入する場合に、微生物生態学的には、 EM菌の導入は生態系を構成しているエネルギーフロー、物質循環、捕食被食、突然変異、競争、逃避、寄生をはじめとする微生物間相互作用に対して少なからず影響を及ぼすことが懸念される。

※EM菌をはじめとする微生物製剤を有効活用するためには,生態系および環境に及ぼす影響に関してよく理解した上で適正な使用方法を確立することが必要である。

 

以上、岡山県によるEM菌による河川や湖沼の水質改善効果の検証も、否定的な結果でした。