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ネットでの匿名告発の問題点

2014年の年末にネットで大量の論文疑義(主に画像の不適切な使い回しの疑い)が出されました。
その疑義をまとめて紹介している一部のブログでは、私が最初に気付いた時点では、[顔写真]というリンクがあり、疑義をかけられた論文著者達がまるで「晒し者」の状態になっていました。
これはやり過ぎだと感じて、ツイッターで批判したところ、あからさまに[顔写真]というリンクは無くなりましたが、各著者の顔写真が掲載されているプロフィールへのリンクが残されておりほとんど改善されていません。

まだ疑義の段階で、ネットでこういうゴシップ的な「晒し」「吊し上げ」の様な事をするのは、やり過ぎだと思います。

私の場合、石井俊輔氏の疑義については、相談を受けた後に複数生命科学分野の教授にも内容について相談し、やはり放置は不可能と判断して正式に私から理研に通知すると同時に石井氏にも連絡をとり、ブログに石井氏側の反論も一緒に掲載し、私の意見を出しておりました。

理研の予備調査では、画像の不適切な切り貼り(故意ではないと判定)の他に、画像の部分的コントラスト改変(加工)も認めているので、やはり深刻さの程度(STAP細胞論文等と比べて…)は別として本調査に移行して精査する内容だったと思うと、複数の先生方からご意見を頂いています。
私のブログにUPした石井俊輔氏の論文疑義に関する解説です。
http://d.hatena.ne.jp/warbler/20140424/1398320093
http://d.hatena.ne.jp/warbler/20140920/1411196357

また、石井氏とはこの件に関してメールで何度かやりとりをしており、石井氏からは疑義の公表と同時に連絡をとり反論の機会を設けた事について、お礼の言葉を頂いています。

私からは、石井氏に次の様に伝えています。
「私の方から疑義を公表しましたが、どうかくれぐれもご心労で体調などを崩されない様に、大事になさって下さい。
不正を疑われる行為を石井先生の方から指導されたとは考えておりません。
多分、お気づきになられなかったのだろうと思います。
それでも部下のせいにせず、ご自分が前面に出られて対応される姿勢と、すぐに調査委員会の委員長の交代を申し出られた潔さに、石井先生のお人柄が出ていると感じます。
今回の件でも思いましたが、疑義を相談できる第三者機関の窓口があれば、もっとスムーズにできたのではないかと思っております。
研究不正問題に対する日本のシステムの改善が進むことを願っております」

また、その後新たに別の人から出された疑義に関しては、
「石井先生が責任著者となられている論文に関して今回新たに指摘された疑義は、実は私にも持ちかけられていましたが、一見して分かる単純な切り貼りでしたので悪質性は少ないだろうと返答して、そちらの方はスルーしていました」
新たな疑義について「予備調査に入ったとのことですので、その結果を見ないと最終的にどうかは分かりませんので判断は差し控えますが、他の先生方に対する疑義についても、同様に悪質性は無いか、低いものだろうという印象を受けました。
別の人から理研に出された疑義の方は、私のブログで公開している疑義とは別ですので、特にリンクはしないでおこうと思います。
こんな形で乱訴の様になってしまうと、調査委員になる人がいなくなってしまうのではないかと心配になります。
クッション役となる第三者機関が必要だとつくづく思います」

こうした意見を伝えたところ、(疑義を受けた当事者として)石井氏もそうした第三者機関がある方が望ましいと考えているとのお返事を頂きました。

私の場合は疑義を出された側とも直接連絡をとり、出して頂いた反論(生データを含む)を掲載した上で、内容について検討するという形式をとりました。
しかし、これでもまだ問題は残されていると思います。
研究不正の疑義はセンシティブな面があり、個人で扱うには相当な覚悟がいります。

一方で、ネットでの論文不正追及では、まだ疑義の段階であるのに論文著者の顔写真やプロフィールまでリンクして晒すという人達がいる現状は、とても危うさを感じます。(勢いに乗った正義感が暴走しだすと怖いです)

ネットでの匿名者による告発中心ではなく、科学者のコミュニティーでこうした案件を扱う様にしないと、どんどん問題が拡大していきそうで心配です。
やはり一定のルールの下で行われる方向にしないと、玉石混淆の疑義指摘によって足を引っ張られてしまう人達が出てしまう恐れがあると思います。
また、行き過ぎた「晒し」や「吊し上げ」も人権問題になってくると思います。

※不正追求と同時に、疑義をかけられた人のレスキューも必要だと考えています。

現状では不正告発がネットで暴走して、無茶苦茶になってしまう事を防ぐ手立てはありません。
それに、ネットの法整備はまだ遅れていますから、匿名で告発する各人の倫理感と自制心に頼るしかありません。

科学者の有志による「ギルド」的な調整組織が、第三者機関として作られる必要性を、改めて感じます。

(追記)
疑義を向けられた相手にも、礼節をもって対応するのは社会人としてのマナーだと思います。
相手を傷つける刃を向ける時には(この場合、疑義の告発)、不必要な部分(相手の人格など)まで切りつけないようにする配慮が必要だと考えています。

自分に疑義が向けられた時、相手がどういう態度である方が望ましいと思いますか?