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原発事故以降アメリカ北西部で乳幼児の死亡数が35%上昇しているって、ホント?

捏造論文 放射線

原発事故以降アメリカ北西部で乳幼児の死亡数が35%も急上昇しているという驚くべき統計結果が報告されていました。この報告をしたのは、医師のJanette Shermanさんと疫学者のJoseph Manganoさんです。

・Is the Dramatic Increase in Baby Deaths in the US a Result of Fukushima Fallout?
米国における赤ちゃんの死亡が劇的に増加しているのは、福島第一原発の放射性降下物のせいなのか?
<2011.6.10〜12>
http://www.counterpunch.org/sherman06102011.html

The recent CDC Morbidity and Mortality Weekly Report indicates that eight cities in the northwest U.S. (Boise ID, Seattle WA, Portland OR, plus the northern California cities of Santa Cruz, Sacramento, San Francisco, San Jose, and Berkeley) reported the following data on deaths among those younger than one year of age:

最近のCDC週刊疾病率死亡率報告は米国北西部にある8つの市(アイダホ州ボイシ、ワシントン州シアトル、オレゴン州ポートランド、そして北カリフォルニアサンタクルスサクラメント、サンフランシスコ、サンノゼバークレー)で1歳未満の子の間での次のデータを報告した:

4 weeks ending March 19, 2011 - 37 deaths (avg. 9.25 per week)
3月19日を最後とする4週間 - 死亡数37(平均9.25/週)

10 weeks ending May 28, 2011 - 125 deaths (avg.12.50 per week)
5月28日を最後とする10週間 - 死亡数125(平均12.50/週)

This amounts to an increase of 35% (the total for the entire U.S. rose about 2.3%), and is statistically significant. Of further significance is that those dates include the four weeks before and the ten weeks after the Fukushima Nuclear Power Plant disaster.

これは35%(全米での総数は約2.3%上昇)の増加になり、統計的に有意である。さらに重要なのはこれらの日は福島第一原発の惨劇の4週前と10週後からなることである。

なんと、福島第一原発事故の前後で死亡数が35%も上昇しているというのです!これは驚きです。
日本から太平洋を隔てた米国の北西部では、飛散した放射性物質もかなり拡散して濃度が非常に薄くなっていると予想されるのに、これほどまでに影響が出るとは。
いや、まてまて。
なんで事故前が4週間分で、事故後が10週間分なのかしら?同じ週数分ではないのは何故?
同じ疑問を、他の人達も持った様でした。
そして、この統計のカラクリをきっちりと見せてくれました。

[Opinion, arguments & analyses from the editors of Scientific American]
サイエンティフィックアメリカンの編集者からの意見、議論と分析

・Are Babies Dying in the Pacific Northwest Due to Fukushima? A Look at the Numbers
福島第一原発事故のせいで太平洋岸北西部の赤ちゃんが死んでいるって?その数を見てみると

http://www.scientificamerican.com/blog/post.cfm?id=are-babies-dying-in-the-pacific-nor-2011-06-21
By Michael Moyer | Jun 21, 2011 04:20 PM

A recent article on the Al Jazeera English web site cites a disturbing statistic: infant mortality in certain U.S. Northwest cities spiked by 35 percent in the weeks following the disaster at the Fukushima Daiichi nuclear power plant. The author writes that "physician Janette Sherman MD and epidemiologist Joseph Mangano published an essay shedding light on a 35 per cent spike in infant mortality in northwest cities that occurred after the Fukushima meltdown, and [sic] may well be the result of fallout from the stricken nuclear plant.” The implication is clear: Radioactive fallout from the plant is spreading across the Pacific in sufficient quantities to imperil the lives of children (and presumably the rest of us as well).

アル・ジャジーラの英語ウェブサイトの最近の記事に、憂慮すべき統計が引き合いに出されている。いくつかの米国北西部の市では乳幼児死亡数が福島第一原発での惨事の後の数週間後に35%に急増したというのである。その著者は「医師のJanette Sherman MDと疫学者のJoseph Manganoが福島第一原発メルトダウンの後に北西部の都市で乳幼児死亡数が35%に急増したことを明らかにし、そして [原文のまま] 多分、破壊された原子炉からの放射性降下物の結果であるだろうとした小論を発表した」と書いている。その意味合いは明確である。その原子炉からの放射性降下物が、子ども達(そして恐らく同様に他の人々も)の生命を危険に晒すのに充分な量で太平洋を越えて広がりつつあるということである。

アル・ジャジーラの英語ウェブサイトでも紹介されたのですね。日本でも個人のブログ等で何人かがこの驚くべき事実を紹介していました。

The article doesn't link to the Sherman/Mangano essay, but a quick search reveals this piece that begins "U.S. babies are dying at an increased rate.” The authors churn through recently published data from the Centers for Disease Control and Prevention (CDC) to justify their claim that the mortality rate for infants in the Pacific Northwest has jumped since the crisis at Fukushima began on March 11. That data is publicly available, and a check reveals that the authors’ statistical claims are critically flawed—if not deliberate mistruths.

その記事はShermanとManganoの小論にリンクされていないが、クイック検索で「米国の赤ちゃんの死亡率が増加してどんどん死んでいる」と始まるこんなものが見つかる。(http://www.counterpunch.org/sherman06102011.html ) 著者らは彼らの、3月11に始まった福島第一原発の危機以来北西部の乳幼児死亡率が跳ね上がっているという主張を正当化する為に疾病対策予防センター(CDC)が最近公表したデータをひっかき回した。そのデータは利用できるように公表されているので、それを調べるとその著者らの統計の主張に重大な欠陥があることが明白である−手の込んだ嘘でなければ。

「統計の主張に重大な欠陥がある」との指摘。
さて、どんな欠陥があるのでしょう?なんか、怪しそうですよね。

The authors gather their data from the CDC’s Morbidity and Mortality Weekly Reports. These reports include copious tables of data on death and disease in the U.S., broken down by disease (U.S. doctors reported 62 cases of rabies the week ending June 11) and location (30 of those were in West Virginia). Sherman and Mangano tally up all the deaths of babies under one year old in eight West Coast cities: Seattle; Portland, Ore.; Boise, Idaho; and the California cities of San Francisco, Sacramento, San Jose, Santa Cruz and Berkeley. They then compare the average number of deaths per week for the four weeks preceding the disaster with the 10 weeks following. The jump—from 9.25 to 12.5 deaths per week—is "statistically significant," the authors report.

著者らはデータをCDC週刊疾病率死亡率報告(http://www.cdc.gov/mmwr/mmwr_wk/wk_cvol.html)から集めた。これらの報告は病気(例えば米国の医師達は週末の3/11に狂犬病の62症例を報告)と地域(West Virginiaでは狂犬病の62症例の内の30例があった)の要素別での米国における死亡と疾病のデータの大量の表を含んでいる。ShermanとManganoは西海岸の8つ都市、シアトル、オレゴン州ポートランドアイダホ州のボイシ、 カリフォルニア州のサンフランシスコ、サクラメントサンノゼサンタクルスバークレーにおける一歳未満の赤ちゃんの全ての死亡を集計している。彼らはそして週毎の平均死亡数をその惨劇が起きる前の4週とその後の10週とで比較した。週平均の死亡数が9.25から12.5に飛躍していたので「統計的に有意」と著者らは報告している。

Let’s first consider the data that the authors left out of their analysis. It’s hard to understand why the authors stopped at these eight cities. Why include Boise but not Tacoma? Or Spokane? Both have about the same size population as Boise, they're closer to Japan, and the CDC includes data from Tacoma and Spokane in the weekly reports.

では、まず著者らが彼らの解析の仲間はずれにしたデータについて考えてみよう。なぜ著者らがこれら8つの市だけにとどめてしまったのか理解に苦しむ。ボイシを含めてタコマを含めなかったのはどうして?もしくはスポーケンは?両方ともボイシと同じくらいの人口だし、もっと日本に近いし、CDCはタコマとスポーケンからのデータも週刊報告に含めているのに。

そうですね。なぜ調べたのがこの8つの市だけなのでしょうね? 理由は示されていませんね。

More important, why did the authors choose to use only the four weeks preceding the Fukushima disaster? Here is where we begin to pick up a whiff of data fixing. Though the CDC doesn’t provide the data in its weekly reports in an easy-to-manipulate spreadsheet format (that would be too easy), it does provide a handy web interface that allows individuals to access HTML tables for specific cities. I copied and pasted the 2011 figures from the eight cities in question and culled all data aside from the mortality rates for children under one year old. You can see those numbers in a Google doc I’ve posted here. (Note: Because I use the most recent report, my mortality figures are slightly higher than the Sherman and Mangano’s, as some deaths aren’t reported to medical authorities until weeks afterward. The small difference doesn’t change the analysis.)

さらに重要なことに、なぜ著者らはフクシマの惨劇前のたった4週だけを選んだのだろうか?ここが、我々がデータの不正工作の痕跡に気が付きはじめた所である。CDCは週刊報告のデータは操るのが簡単なスプレッドシート・フォーマットの形式で提供されていない(世の中はそんなに甘くない)のだが、個人が特定の場所についてのHTML表を利用できる便利なウェブインターフェース( http://wonder.cdc.gov/mmwr/mmwrmort.asp )を提供している。私は問題の8つの市に関する2011年の数字をコピーして貼り付け、著者らのデータとは別に1歳未満の子供の死亡数の全データを選び取った。これらの数字はGoogle docにポストした (https://spreadsheets.google.com/spreadsheet/ccc?key=0Ass5dxTp_CuzdFlhOTdydVFVTGVoN0drZ2tud1k4eUE&hl=en_US )ので見ることができる。(注:私は最新の報告を用いているので私の死亡数はShermanとManganoのものよりも若干高くなっているが、これはいくつかの死亡は各週の後までに医療機関に報告されていなかったことによる。小さな差は解析の結果を変えていない。)

さあ、ここからです。「なぜ著者らはフクシマの惨劇前のたった4週だけを選んだのだろうか?」
一番の疑問のポイントはここですね。

Better still, take a look at this plot that I’ve made of the data:
さらには、そのデータで私が作ったこのプロットをちょっとご覧あれ。


The Y-axis is the total number of infant deaths each week in the eight cities in question. While it certainly is true that there were fewer deaths in the four weeks leading up to Fukushima (in green) than there have been in the 10 weeks following (in red), the entire year has seen no overall trend. When I plotted a best-fit line to the data (in blue), Excel calculated a very slight decrease in the infant mortality rate. Only by explicitly excluding data from January and February were Sherman and Mangano able to froth up their specious statistical scaremongering.

Y軸は問題となっている各週の8つの市の乳幼児死亡総数である。福島第一原発の事故に至る前の4週(緑色)ではその事故後に続く10週(赤色)と比べると死亡数が少ないが、一年年全体で見ると全体的な傾向は見られない。最適合線(青色)をデータに対してプロットした場合、Excel乳幼児死亡の割合がとてもわずかな減少となると計算した。明らかに1月と2月からのデータを除外することによってのみ、Shermanと Manganoは彼らのもっともらしい統計のデマを泡吹かすことができるのである。

な〜るほど。原発事故の後で乳幼児の死亡数が高くなったと見える様に、対象とする市とデータの期間を都合良く選んだのね。
だから、4週間と10週間というチグハグな期間の比較になったのでしょう。もうバレバレですね。(笑)
範囲を広げて全体的に見ると、バラツキ具合からして福島第一原発事故の前後でそんなに変化していません。
なんだ、
全然乳幼児の死亡は急増なんてしていないじゃないの。やっぱりねぇ。

This is not to say that the radiation from Fukushima is not dangerous (it is), nor that we shouldn’t closely monitor its potential to spread (we should). But picking only the data that suits your analysis isn’t science—it’s politics. Beware those who would confuse the latter with the former.

福島第一原発からの放射線は(米国において)危険ではなく、それが拡散する可能性を注意深く監視すべきではないと言っているのではない。だが、自分の解析に合うデータのみを選ぶのは科学ではなく−それは政治的策略である。後者(策略)と前者(科学)を混同する人達に注意するように。

そうですね。こんな姑息な手を使う人達なんかは信用できません。みなさんも、気を付けましょう。

そうそうJanette Shermanさん(ジャネット・シェルマン博士)と言えば、こんな動画が出回っています。

これを翻訳して紹介しているブログも。
http://www.universalsubtitles.org/ja/videos/zzyKyq4iiV3r/

この中で、Janette Shermanさんは、世界保健機構(WHO)でさえチェルノブイリの真実を語っていないと批判しています。
また、「バンダシェフスキーという科学者は研究で子供達の体内に蓄積されたセシウム137の量が実験動物と同じ値になっていることを発見しそれが心臓にダメージを与えていることに気づきました。この研究結果を発表したことで、彼は刑務所に収監されてしまいました」とのことですが、研究結果を発表しただけで逮捕なんて、本当にそんな事がされてしまうものでしょうか?
他にも色々とおっしゃっていますが、証拠となる資料が示されていないのでどこまで真実か分かりませんね。

Janetteさんは、都合の良い数値だけ拾ってきてきちんと統計をとったかの様に見せかけて(稚拙なのですぐにバレましたが)平気で嘘をつく人です。私は、素直に彼女の言う事を信じられません。
このおばちゃん、かなり胡散臭いと思います。
この人が「真実を語る人」として一部で手放しで持て囃されてしまっているのは、どうかなと思います。

[P.S.]
私のこのブログ記事は反原発叩きが目的ではありません。反原発の人達は、"ジャネット・シェルマン博士"の様な胡散臭い人達とは手を切った方がいいと思いますよ。

※参考:統計のごまかしのネタ明かしの話については、こちらのエントリーにもあります。
「牛にホメオパシーが効くってホント?」
http://d.hatena.ne.jp/warbler/20110105/1294199038