予防接種で自閉症になるってホント?

予防接種で子ども達が自閉症などの発達障害になるのではないかという不安を世界各地の親の間に広める根源となった、1998年にThe Lancetに掲載された論文は、実は捏造によるデタラメであった事の詳細を明らかにしたジャーナリストであるBrian Deer氏の報告書が今年1月6日にイギリスの医学雑誌BMJに掲載されました。
・How the case against the MMR vaccine was fixed
http://www.bmj.com/content/342/bmj.c5347.full
まず先に、Andrew Wakefield氏を第一著者とする、この問題となった論文を見てみましょう。要旨の部分を紹介します。
(この論文は、昨年二月に撤回されています)

Ileal-lymphoid-nodular hyperplasia, non-specific colitis, and pervasive developmental disorder in children
小児における回腸結節性リンパ過形成、非特異性大腸炎、および 広汎性発達障害

Background 背景

我々は、慢性腸炎および退行性発達障害を持つ子ども達の検討を行った。

Methods 方法

12人の子ども達(平均年齢6歳[範囲3-11]、11人は男児)は、正常な発達の後に言語を含む獲得した機能の喪失及び下痢腹痛の病歴があるとして小児消化器科部に照会された。
子ども達は消化器系、神経系の精査、発達診断が行なわれ、発達記録が精査された。
回腸大腸鏡検査および生検試料採取、磁気共鳴イメージング(MRI)、脳波検査(EEG)、および麻酔下での腰椎穿刺が行われた。バリウム後のX線撮影も可能であれば行った。生化学的、血液学的、および免疫学的な特性が調べられた。

Findings 所見

両親らによると、行動上の症状の開始は12人の子ども達の内8人が、はしか、おたふく風邪、および風疹のワクチン(MMR)と関係し、1人がはしかの感染と関係し、その他では中耳炎と関係していた。
12人全ての実ども達はリンパの結節性過形成からアフタ性潰瘍までの腸の異常を抱えていた。
組織像では11人の子ども達に斑状の慢性炎症、7人に反応性回腸リンパ過形成が見られたが、肉芽腫は無かった。行動障害には自閉症 (9人)、崩壊性精神病(1人)、およびウイルス感染後またはワクチンによる脳炎の疑い(2名) が含まれていた。限局性の神経的異常は無く、MRIEEG検査は正常であった。異常な検査値としては尿中のメチルマロン酸が年齢適合対照群と比較して有意に上昇し(p=0.003)、4人の子ども達にヘモグロビン低下、4人の子ども達に血清IgA低下があった。

Interpretation 解釈

我々は、以前は正常であった子ども達に消化器疾患と発達退行の関係を確認したが、これは全般に可能性のある環境要因と時間的な関連があった。

本文の「results 結果」の記載内容については、Brian Deer氏によると、

「これら8人の子ども達では曝露(MMRの接種)から最初の行動の症状までの期間は6.3日(1-14日の範囲)であった」

とあります。
この論文が主張しているのは、MMR[はしか、おたふく風邪、風疹の三種混合ワクチン]と新たに見出された「消化器疾患と退行性の発達障害を併せ持つ疾患」とに関係があるというものでした。ただし、被験者がたった12人という少数であり、MMR発達障害の関係も推定の域を出ないものでした。
この新しい知見は、マスコミに取り上げられ次第に一人歩きをしていきしていきました。これがどの様にマスコミに取り上げられていったかについて、イギリスでの状況が解析されています。
・The Cardiff ESRC report−Science, the public and the media
http://www.esrc.ac.uk/ESRCInfoCentre/Images/Mapdocfinal_tcm6-5505.pdf
この中から、一部を紹介します。

2002年の1月28〜2月28日の1ヶ月間にTV、ラジオ、新聞を対象としたMMRに関する報道についての調査結果によると、Autism/Bowel Disease mention(自閉症/腸 の病気に言及)という内容のものが最も多くて全体の69%を占めていました。この内容には、MMR自閉症などの関係を否定したものも含まれていると思われますが、MMR自閉症という言葉が含まれる報道を聞いた人達の中には、詳細はおぼろげになっても記憶の中でこれらの言葉が次第に結びついて「MMR」→「自閉症」という印象だけが残ってしまう恐れが多分にあります。
この記憶の変化については、kumicitさんのブログ「忘却からの帰還」で解説されています。
・否定論者と戦うときに Again 
http://transact.seesaa.net/article/178910723.html 
社会心理学者Norbert Schwarzの研究により、

要するに...
 •与えられた情報:「CDCは言っている『副作用はインフルエンザよりも悪い』は『誤りだ』と」
 •記憶に残った事:「CDCは言っている『副作用はインフルエンザよりも悪い』と」

となる傾向があることが確認されたそうです。
また、認知社会心理学者Ruth Mayoの実験でも「多く人々が、否定情報の『否定タグ』が時間とともに欠落してしまうこと」が示されたそうです。

つまり、こうなる:
 •与えられた情報:「サダム・フセインは米国を攻撃していない。オサマ・ビン・ラディンが攻撃した」
 •記憶に残った事:「サダム・フセインは米国を・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・攻撃した」

こちらは、陰謀論なんかと繋がっていきそうですね〜
ということで、マスコミ自身は今の様な形で風説が広まるとは多分思ってもみなかったかも知れませんが、マスコミが盛んに取り上げたことで、MMRまたは「予防接種」→「自閉症という形でいずれにせよ、人々の間で広まっていったのではないかと思われます。この論文が権威ある医学雑誌The Lancetに掲載されたことが発端になり、予防接種に疑念を抱いて接種を避けようとする人達が続々と現れました。
これについては、今年1月6日のBMJに記事を書いたジャーナリストのBrian Deer氏も述べています。

The Lancetは、その論文を撤回するのに12年を要したが、この間にその論文による被害を輸出し続けた。親達の確信がイギリスにゆっくりと再循環し、その恐怖は世界中に飛び立ち、怖れと罪と感染症を解き放った−そして一般の人達にワクチンへの疑念を煽り続けている。はしかの発生に加えて、他の感染症も復活し、カリフォルニアでは昨年夏に10人の赤ちゃんが百日咳で亡くなった模様で、これは1958年以来最悪の発生である。

アメリカでは特に一部のコミュニティーの人達が子どもが発達障害になるとして頑なに予防接種を受けることを拒否して問題になっているそうです。
・FRONTLINE−THE VACCINE WAR
http://www.pbs.org/wgbh/pages/frontline/vaccines/view/

ワクチンは世界を変え、天然痘からポリオ、ジフテリアなどの一連の恐ろしい病気の大部分を根絶して、ほとんどの人の寿命を数十年伸ばした。しかし、その利益にも関わらず—そして数多くの科学研究がワクチンは安全であると示しているのに—まだワクチンを怖れたままの親達の活動が盛んになってきている。そしてアメリカのコミュニティーのいくつかでは、かなりの数の親達が全員でワクチンを拒否し続けており、はしかや百日咳などのワクチンで予防可能な病気の復活についての新たな心配が持ち上がっている。

日本でもこういった影響を受けて予防接種害悪論を振りまく人達が少なからずいます。例えばホメオパシー普及・推進団体は世界標準で予防接種は害だとして執拗に攻撃をしていますが、日本でも多くのホメオパシー団体が予防接種の毒によって自閉症などの発達障害が引き起こされるとして活発にネガティブキャンペーンをしています。

困ったものですね。この論文の罪は大きいです。しかも、全くと言って良い程の捏造だったのですから...。

では、BMJに掲載された、捏造の過程の詳細を報告した記事に戻ります。
Brian Deer氏はこの論文の問題を調べていくうちに、大きな疑念を抱き始めます。この論文で取り上げられた患者の1人として数多くのマスコミに出た子どもの実際の病歴が、この論文に記載されているどの子のものとも一致しなかったのです。そこで、彼はこの論文の共著者の1人であるJohn Walker-Smith元教授と会って話をしました。

「(母親が説明した)その子の病歴と一致するものがその論文の症例に無いんです」と、私は彼に話した。「1つも無いんです」
「ああ、それは本当かもね」と、その小児消化器病学の元教授は呆気なく答えた。そのプロジェクトにその男児を参加させ、彼に£23 000.30を支払ったBarrに報告書を書いたので、彼はそのケースをよく知っていた。

「まあ、彼女が私に話した事が正確では無かったか、その論文が正確では無かったんですよ」「うーん、本当にコメントしちゃいけないんですよ」と、彼は言った。「あなたはこの様に議論されるべきではないと思う領域に実際に触れています。それと、多くの医学的な詳細を知り得る立場にあなたを置いてこれとそれとを一致させようとする可能性があるので、私は親達がその様な詳細についてあなたと話し合うことは間違っていると思います。なぜなら、それは機密事項なのだから」

これにより、Deer氏はこの論文に対する疑念を強めていきます。
この後、この論文の研究費の出所を突き止めたDeer氏は、資金面からの疑念を2004年2月にSunday Timesの記事で明らかにしました。
・Revealed: MMR research scandal 
http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/health/article1027636.ece?token=null&offset=0&page=1

最初の子どもの検査に続く数ヶ月間で、その病院を介してより多くの子ども達が照会された。親達の多くはノーフォーク州キングズリンの事務弁護士であるRichard Barrのクライアント(依頼人)であった。Richard Barrはその法的な(ワクチン製造業者を訴える)取り組みを先導していて法律扶助委員会からWakefieldの資金を調達して準備をしていた。

The Sunday Timesはそれらの子ども達のうち確定しているだけで4人、多分5人がその法律扶助の支援の対象になっていたことを現在つきとめている。そしてWakefield自身は彼らの訴訟を支援する為にその繋がりの証拠を探す事で£55,000に上る支払いを受けていた。

彼(Andrew Wakefield)が親達にMMRを避ける様にと警告して、自閉症との結びつきを主張している研究を発表していた時に、ワクチン製造業者に対して用いる証拠を探している事務弁護士を介して彼に資金が提供されていた事を(共著者達にさえも)公表していなかったことが調査によって判明した。

ますますブラックですねぇ。

また、Wakefield氏はこの論文を元ネタにしたビジネスを考えて、そのために一連の特許を申請していたようです。例えば、論文が掲載される8ヶ月前に彼独自の「より安全な、はしかワクチン」についての特許を申請していた様です。商魂逞しいですね。
・Patent Office. Filing receipt. 6 June 1997, published at Deer B. Revealed: the first Wakefield MMR patent describes “safer measles vaccine”.
http://briandeer.com/wakefield/vaccine-patent.htm

Deer氏の追求により、イギリス医学総会議(GMC)の研究実行の適切性(委員会)でこの論文について調査が開始されました。そして、次々と論文のデータに関する不正が見つかっていきました。
http://www.scribd.com/doc/25983372/FACTS-WWSM-280110-Final-Complete-Corrected

それでは、BMJの記事が明らかにした、被験者12人の子ども達についての実際の病歴と論文での記載の相違について整理していきます。
http://www.bmj.com/content/342/bmj.c5347.full

How the link was fixed どの様にして関連が修繕されたのか

The Lancetの論文は12人の子どもの患者達の症例シリーズであった; それは腸炎と退行性自閉症の「新規な症候群」で、これは「明かな引き金となる事象」としてMMRと関連付けられた。しかし、真実は、

  • 退行性自閉症であると報告された9人の内の3人のこども達は全く自閉症を抱えていないと診断された。たった一人だけが明らかに退行性自閉症を抱えていた。
  • 12人全ての子ども達が「以前は正常」だとされたが、5人はそれ(MMRワクチンの接種)よりも前に発達の懸念が存在していたことが記録されていた。
  • 何人かの子ども達はMMRの日から数日の内に最初の行動上に現れる症状を経験したとされるが、(実際の)記録ではワクチンの数ヶ月後に始まったとされていた。
  • 9つのケースでは、特に問題のない結腸の組織病理学的な結果−炎症性細胞集団での変動が無いか最小−が医大の「研究精査」の後で「非特異性大腸炎」に変わっていた
  • 8人の子ども達の親達がMMRを責めていると報じられたが、11家族がその病院でこの申し立てをしていた。3つの申し立ての排除−これらは全て問題の兆候が出るまでの時間が数ヶ月であった−は、発症までに14日という時間的な関連の様子を作り出すのを助けた。
  • 両親達は、反MMR活動家を通じて(Royal Free病院に)集められ、その研究はあらかじめ計画された訴訟の為に依頼され資金を受けていた。

そして、12人の子ども達の実際の病歴と論文に記載された病歴の比較です。(Lancetに掲載された論文と実際の病歴が異なっていたものを赤で色づけしました)

(注)ここで、MMR→最初の症状」は、MMR接種後数日で最初の症状が現れたか否かについてです。

この様に、12人全ての子達の実際の病歴が変更されていたことが判明しました。
これがどんな風に行われていたのかについて、子ども3の場合を例として出します。

彼は6歳半で、その病院(Royal Free病院)から200マイルの所にあるマージサイドに住んでいた。彼はMMRを生後4ヶ月で受け、一般開業医のノートには最初の懸念はその15ヶ月後に記録されていた。彼の母親は、その4年後にJABS(反ワクチン活動をしている団体)の勧めでWakefieldに連絡した。彼女は私に、彼女の息子は兄弟に攻撃的になったと話し、記録には彼の言葉が発達しなかったと書いてあった。

ロンドン(のRoyal Free病院)に照会される18ヶ月前に、彼の両親は「私達はMMRの針が彼[子ども3]を現在の様にしたと感じた」と、地元の小児神経科医であるLewis Rosenbloomに宛てて書いた。彼らはその医師にワクチン製造業者から「正義」を望んでいると話し、法律扶助を辞退した。「MMRが子ども達を自閉症にすることがまだ証明されていないと言っても、私達はその注射が[子ども3]を精神遅滞にしたと信じているし、それが元で自閉症になったのだろうと思います」

私はこの家族を二度訪ねた。彼らの(予防接種の)影響を受けたという子どもは現在10代で彼自身と他の人達に対しての障害を抱えている。彼の母親はその子の診断は元々「自閉傾向を伴う重度の学習障害」であったと話したが、それが自閉症(という診断名)に変わるのを受け入れるのにずっと抵抗していた。

MMRとの繋がりとしては、ただ疑念のみしかない。私は、いずれにせよ、彼の家族が正しいことを言っていると思わない。私が何故彼らが息子をRoyal Free病院に連れて行ったのか質問すると、彼の父親はこう答えた:「私達はちょっと心が弱くなっていて、答えを探していたのです」

子ども3が深刻な腸の障害を抱えていたのは疑いもなく本当である:難治性で生涯続いている便秘だ。これは12人の子ども達の症状や兆候の中では最も一貫性のある特徴であったが、炎症性の腸疾患に見出されることが期待されるものとは逆であり、これについては論文のどこにも言及されていない。この若者は彼の特殊学校で投薬されているものは、彼の母親が言うには、一日に5包みにもなる下剤だということで、とても重症である。(中略)
「彼は頭の打ちつけ、足蹴り、家中の物を何でも壊すことを始めたのです。そしてトイレに行きたくなって排便するのです」

Royal Free病院のチームにとっては、しかしながら、これらの症状について両親達の報告があった時、その様な運動性の問題はWakefieldの症候群を探す事の二の次にされた。ほとんど全ての子ども達で、彼らは共通して回腸末端に肥大した腺が共通して記録され、これが「非特異性大腸炎として報告されていた。事実、私が先の4月にBMJで暴露した通り、その病院の病理学科は子ども達の大腸は概して正常であるのを見出したが、医大の「精査」でその結果が変えられた。

その発表された論文に記載された子ども3の症例の記録における消化管病理学の記述のこの様な漸進的変化は、最たる例である。回腸結腸検査(これは、GMCの追訴と弁護の専門家達も同意しているが、臨床的に指示されていない)の後、病院の病理学医達は全ての大腸の試料は「組織学の範囲内で正常」だと判定した。しかし、3ヶ月後にその男児は退院させられ、Walker-Smithはその記録を取り消してその診断を「中程度の回腸結腸炎」と書き換えた

Deer氏はこの他にも、Walker-Smith氏らがRoyal Free病院で対象となった子ども達を診察した際に親達に(誘導的な)質問をして、親達が「そうだったかも知れない」と言った事を、Wakefield氏によって「そうであった」として新たに記録されていった過程も掴んでいます。
また、予防接種から「発症」までの期間も、訴訟を有利にする為かどんどん短くされていったという過程も明らかにしています。

GMCの公聴会の間に浮かび上がった他の不一致は、MMRを責めていた家族の数についてだった。論文では8家族(1, 2, 3, 4, 6, 7, 8, 11)がワクチンと発達の問題を関連付けていた。しかし、記録での総数は実際には11だった。子ども5、9、12の両親も病院の記録ではワクチンを責めていたが、彼らの信念についての意見はその論文では無かった事にされていた。(中略)

さらに、ワクチンが責めを負うべきだという幾人かの親達の信念を論文から削除することで、訴訟にとっての時間の関係がはっきりした。12の内11家族の記録から、主張された症状の発症までの期間は(法廷的に役に立たない)最長4ヶ月であった。しかし、この論文が出される6ヶ月前にRoyal Freeで回覧されたこの論文のバージョンでは、12の内の9家族に減っていたが、まだ発症まで最長56日という役に立たないものだった。最終的に、Wakefieldは12の内の8家族に落ち着かせ、主張された発症まで最長で14日になった

最後の方の2つのバージョンの間で、改訂で主張された発症までの平均時間も14から6.3日へと大幅に削減されていた。「これらの子ども達ではMMRワクチンに晒されてから最初の行動症状までの期間は6日であり、これは強い時間的な関係を示している」と、彼はThe Lancet論文の8ヶ月前に申請した彼独自の「(より安全な)はしか予防ワクチン」についての特許でとりわけこう強調していた。

もう、極めつけにブラックですね。

Wakefieldは、しかしながら、どれについても悪行を否定している。彼はこれまで一度もその子ども達が退行性自閉症だとも主張していないし、彼らが以前は正常だったとも言っていないと述べている。彼はその研究で誤報も書き換えも一切していないし、はしかワクチンの特許権をとったこともない。その子ども達のどの子についても病院に照会される前にはBarrの依頼人ではないし、彼はその弁護士(Barr)からは巨額の支払いは全くもらい受けていない。そこには利害の対立は一切無い。彼は陰謀の被害者だ。彼はこれまで自閉症MMRを結びつけたことは無いと。

「Deer氏の私に対するペテンの疑義は、名高い熟練した医師でもある研究者が突然彼自身が金持ちになる為に偽データに手を染めたという主張である」と、彼はイギリス報道苦情処理委員会で私に対して今や葬り去られた主張をした。「他の著者達が全てのデータを作り出して’用意した’というのは、The Lancetで報告している」「私はただ彼らが完成させたデータを論文発表の為に表と物語形式にしただけだ」

Wakefield氏、これだけ動かぬ証拠を突きつけられても、まだ自分が行った捏造を否定して悪あがきしています。

参考までに、彼は2010年5月に医師免許を剥奪されています。

CNNがWakefield氏の反論を受けて、論文の捏造を暴いた立役者であるDeer氏にインタビューをしています。
・Brian Deer on CNN, responds to Andrew Wakefield’s wild charges
http://leftbrainrightbrain.co.uk/2011/01/brian-deer-on-cnn-responds-to-andrew-wakefields-wild-charges/

DEER氏:ええ、私は彼の動機は基本的にお金儲けだと信じています。最初に訴訟で金儲けしようとして、彼は訴訟での専門家として雇われて、ご存知の通り75万ドルが支払われています。しかし、彼は恐怖を煽ってMMRワクチンに対する一般の人達の心配を押し進めることでもっとお金を稼ぐことが出来ると考えてあらゆるビジネスへの興味をも持っていました。

BMJの最新記事に戻ります。

The Lancetの論文に功績を主張する署名したにも関わらず、彼の共著者であるWalker-SmithとMurchはどの症例がどれなのかさえ知らなかった。Walker-Smithは、彼はWakefieldを「信頼していた」と言った。「私がその論文に署名した時、私は善意で署名した」と、彼はGMC委員会で話した。どの誤りも認めず、彼は発表された報告はMMRについてのものでさえ無く、単なる新しい「臨床病理的疾患単位」だと異議を唱えた。彼はRoyal Freeへの入院は「もっぱら消化器の病気に関していた」と言い、どの様に子ども達を調達したのかは「重要ではない」と言った。彼の弁護士達は、彼は委員会の決定に対して訴え続けるとして、彼に私の質問に答えない様にとアドバイスをしていた。

Walker-Smith氏もWakefield氏と共に2010年5月に医師免許を剥奪されています。

これが、この予防接種への恐怖を世界にまき散らした論文の顛末なのでした。

発達障害などに苦しむ子の様子を辛い思いで見守りなんとかしたいと願う親達や、子ども達を守ろうとする親達の心情を手玉にとって、あわよくば儲けようとしていた様子が、ありありと浮かび上がっています。この研究の対象にされてモルモットの様に扱われてきた子ども達も、とても気の毒です。
酷い話ですね。

そのお粗末な捏造論文せいで、予防接種を拒否する人達の活動が活発になり、多くの研究者達の知恵と努力によってせっかく予防接種で防ぐことが出来るようになった、死亡率が高かったり重い障害などを引き起こす感染症達がまた世界のあちこちで跋扈し始めてしまっています。残念なことです。

この元凶ともなった論文は、真っ赤な捏造だったとして葬り去られましたが、彼のビリーバー達はこの事実を受け入れず、相変わらず彼を支持し続けています。最近のNBCテレビの特集番組での調査で「Dr Wakefieldはヒーローだ」と言って熱狂的に支持する人達の様子が伝えられていたそうです。

一旦、信じ込んでしまうとそう簡単には信念は変えられない様です。
ホメオパシーについて言えば、ベンベニストの「水の記憶」論文が誤りだったとして掲載されたNature誌から撤回された後も、まだホメオパシー団体は陰謀によって貶められただけだと言い張って、その論文は本当は正しかったとしてそれを支持し、未だに宣伝の材料に使い回しています。

ホメオパシー団体は、Wakefield氏の論文についても、これまで予防接種害悪論を宣伝する格好の材料として利用してきました。この論文が捏造と判明した今後も、同じ様にあれは陰謀によるものだとしてその論文は本当は正しかったとして支持しつづけるのではないでしょうか?

この論文捏造の背景にいて、ワクチン製造業者を訴えてお金を取ろうとWakefield氏と画策していた事務弁護士のRichard Barr氏は、現在はホメオパス協会(Society of Homeopaths)の役員をやっています。彼はホメオパスではないそうですが、反予防接種キャンペーンをするには格好の存在なのかもしれません。蛇の道は蛇って感じですね〜。
http://www.homeopathy-soh.org/about-the-society/Bod.aspx (上から8番目の人)

本当に、困ったものですね。

[追記] ベンベニストの「水の記憶」論文については、以下を参考にどうぞ。
・Skeptic's Wiki:「水の記憶」事件
http://sp-file.qee.jp/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page=%A1%D6%BF%E5%A4%CE%B5%AD%B2%B1%A1%D7%BB%F6%B7%EF


関連エントリー
MMRワクチンと自閉症の捏造論文事件に関する歴史
http://d.hatena.ne.jp/warbler/20110114/1294953646

・予防接種で自閉症になるという恐怖の拡大に加担したマスコミ側の問題について
http://d.hatena.ne.jp/warbler/20110120/1295526687

(これらも、どうぞお読み下さい)