2017年の日本国際賞 受賞者発表会

国際科学技術財団は2月2日、2017年の日本国際賞に「生命科学」分野として「クリスパー・キャス」というゲノム編集技術を開発したジェニファー・ダウドナ博士(米カリフォルニア大学教授)とエマニュエル・シャルパンティエ博士(独マックスプランク感染生物学研究所長)と、「エレクトロニクス、情報、通信」分野として「RSA暗号」を開発したアディ・シャミア博士(イスラエル・ワイツマン科学研究所教授)が選ばれた事を発表しました。

f:id:warbler:20170204235108p:plain

(国際科学技術財団のプレスリリースより)

 

シャルパンティエ博士とダウドナ博士の受賞内容

http://www.japanprize.jp/simplyfied/medicine/2017_charpentier_doudna.html

 

シャミア博士の受賞内容

http://www.japanprize.jp/simplyfied/mathematics/2017_shamir.html

 

この発表記者会見に登壇したジェニファー・ダウドナ博士(右)とエマニュエル・シャルパンティエ博士(左)

f:id:warbler:20170204235255p:plain

ダウドナ博士とシャルパンティエ博士に記者として質問をする機会を得ました。

両博士の活躍は、多くの女性研究者の励みにもなっています。

そこで、私からは次の質問をしました。

 

片瀬: 日本にも女性の科学者がいますが、女性が研究者として仕事することに対する社会の理解が最近ようやく芽生えてきたところで応援するような姿勢も出来てきたのですけれども、実際には結婚や出産などのいろんな障害がありなかなか研究を続けられなかったりして、まだまだ少ない状況です。女性研究者の先輩として何かメッセージを頂けますでしょうか?

 

ダウドナ博士: 私たちは本当に素晴らしい時代に科学者になったと思っています。エマニュエルさんも私も生物科学という領域ではありますが、どの領域でもそれは言えると思います。2人とも科学に対する情熱、世界を理解したい、自然を理解したいということが出発点になってこの分野でやってきたわけなんですけれども、2人ともその間にメンターと呼べるような素晴らしい先生方にいろんな形で励まして頂いたという意味で、これは男女を含めてですけれど、先輩の科学者に恵まれたと思います。ご質問は若手の女性研究者に対してということで、女性に向けて話しますが、これは女性に限らず若手の人達みなさんにも言えることです。今はいろいろなキャリアを自分の望むような形で追及できる時代になりました。例えば私は母であり妻であり娘でもあり、そうしたいろいろな役割を兼務しています。そういうことが昔よりできるようになってきた、そういう時代なんだと思っています。特に女の子達には、恐れずに自分の情熱の赴く方向へと進んで頂きたいと願いますし、学生たちにもいつも自分の情熱が結びつく方向に活動を続けなさいという風に言っています

 

シャルパンティエ博士: (笑顔で私も同じ意見だと頷く)

 

 

【おまけ】

ゲノム編集の画期的な技術であるクリスパー・キャスについて、記者会見後に少しばかり技術的な質問をしました。通訳なしでドキドキでしたが、私が現役の研究者であった頃にはまだこの方法が開発されておらず、詳しく知らなかったのでこの方法を利用して挿入(ノックイン)できるDNA断片の長さについてダウドナ博士に伺うと、「良い質問ですね」と応じて下さいました。例えばGFPなどの遺伝子は小さいのでわりと簡単にノックイン可能で、現在は2000~3000bp程度のDNA断片のノックインができるようになってきており、将来もっと大きなDNAを挿入できないかというチャレンジが盛んにされているとのことでした。私は元研究者ですと自己紹介がてら、私の研究論文の別刷りをお渡ししましたが、当時、クリスパー・キャスの技術があれば、もっと楽に研究を進めることができたろうにと話しました。応じて下さったダウドナ博士は、まったく気取ったところのない優しい物腰の素敵な方で、すっかりファンになりました。(笑) 将来のノーベル賞学者(←ほぼ間違いなく)とお話しする機会を頂けて、とてもありがたかったです。